音楽もの映画によくある「天才はその才能ゆえに理解されがたく、最終的に超次元的になっちゃう」みたいな理解されない前提の物語じゃなくて、最後まで良くも悪くも感情的で俗っぽくさもある「人間」だったケイト・ブランシェット演じるターに魅了された。（ケイト充的にも大満足）どこまでが芸術家的ジャッジで、どこからが個人的感情かなんて本人にも周囲にも境界線はわからない。ターは実在しないのに「彼女はまさにターそのもの」と思わせてくる実力に唸る。
序盤の脚本、その表層は難解に思えるかもしれないが、それすら後半の展開のための伏線ともいえるのではないか。筋書きはいたって現代的なリアリティもあってシンプル、ありきたりに撮ればチープなスリラーのようになりそうなところを、長回しシーンの多用と、その時なにを映すかによって、緊張感を保ち、品位あるフィルムとして仕上げている。
