胃潰瘍のサンタ

TAR/ターの胃潰瘍のサンタのネタバレレビュー・内容・結末

TAR/ター(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

157分もある大長編だったとは知らずに鑑賞。
ものすごい情報量が詰め込まれた絵解きのよう。
中盤までは混乱しつつも、色々なものの繋がりが薄っすらと見え隠れして引き込まれ、長さはほとんど気にならない。
特に、絶対にシンメトリーにならない撮影が最高だ。構図の良さとケイト・ブランシェットの演技だけで、ただの会話シーンも延々見ていられる。奥行きを使って登場人物を動かし続ける演出も見事の一言。

が、終盤彼女が孤独になってから先は全くしっくり来なかった。
無論、この映画がターの転落物語ではなく、それまで見ていた権威的・支配的な「音楽」から執着から自由になる物語だということは、見ていれば分かる。でもそれは所詮、理屈の話だ。
途中までの行き詰まる心理劇と、練習中のマーラー5番の迫力を見せられて、最後に一大演奏をして見事に破滅する『ブラック・スワン』風のクライマックスを期待しないなんて、ちょっと無理というもの。
このアンチクライマックスは何と言うかもにょってしまった。
もっとも、ちゃんと理解できていない可能性の方が高いから、もう一回観たいとも思う。
終盤が納得いかなかろうと、157分の時間や鑑賞料金をもう一度払うことを、さして惜しいとは思わない。そんな映画。

まあ、明日すぐ行かないともう終わっちゃって観られないかもしれないけど……