Qoo

PLAN 75のQooのネタバレレビュー・内容・結末

PLAN 75(2022年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

本当は★5なんて付けたくない……
とても嫌な作品だった。ホラーよりずっとずっと怖かった。

ミチさん始め、そのお友達、役所の人々、そして“おじさん”……皆、リアルで本当に素敵だった。
柔らかい口調で新人研修を行うコールセンターの女性も、本当に嫌な役だったけどリアルで、現実味があって良かった。

私自身は“安楽死”についてはアリだと思っていた。それは主に、苦痛を伴う闘病等で苦しんでいる方や、どうしようもない事情で生きていくのが苦行でしかない方の最後の選択肢の一つとして。でも最近は、そうハッキリとは言い切れない気持ちになっている。
もし、こういった制度が実際に日本に導入されてしまうと、きっと「なぜ死なないの?」「まだなの?」みたいな目で見る人達が増えてくる。実際にはそう思われていなくても、自分もそういう目で見られているのではと精神的に追い詰められ「そろそろ選ばなきゃいけないのかな」などと思うようになるのでは……
この制度を健全に運用できる程には、まだ人の心は成熟していない。

善意と笑顔に包まれてゆっくり殺されていく社会。“自分で選べる”と言いつつ、ここで描かれている方々は“選ばざるを得なかった”というのが本当のところ。
ラストでミチさんは“我に返った”ように見えた。これは本当の自分自身の決断ではない、と気づいたのではないだろうか。自分は流されていた。自分の人生なのに、一体誰に気を遣っていたんだ。こんなのが本当の人間の死であって良いはずがない……と。

子供、若者、老人、これらは別々のものではない。子供が若者になり、やがて老人になっていくのだ。老人がこんな風に死を選ぶ世の中が正しいというなら、それはそのまま子供や若者の命も軽視されているということだ。「今働き盛りのあなた達も、老いたら不要になる」と言っているも同じだ。
センター?に向かう途中、元気な小学生に手を振られ、応えてあげるミチさん。この小学生もいつか“いらない存在”になるのだとしたら、人は一体何のために生きているのか。

自分も遅からず老人になるという事を、頭では分かっていても、本当に実感している若者は少ないと思う。老人達の問題を他人事だと思っている。考えないようにしている。或いは、自分には家族がいるから、貯蓄があるから、ここで描かれている寂しい老人達のようにはならないと思っている。

私の好きな言葉。
『若者叱るな来た道だ。年寄り笑うな行く道だ。』

人生は一本道だ。
Qoo

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