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NOPE/ノープのYOKのネタバレレビュー・内容・結末

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

とても意見の別れそうな作品でしたん。
私自身はとてもとてもジョーダン・ピール好きなので勝手に「ははあん、つまり監督が言いたいのはこういうことだな? 」って納得出来たので楽しめたけど、夫は「全く分からんかった(鼻ほじ)」ってなってたので。

以下、ネタバレとかなり個人的な解釈を含む感想をつらつらと書いていきますん。長いです。

まずね、オープニングが最高に怖かった。足元しか見えてない人の傍らに直立に立つ靴と黄昏れるチンパンジー。明らかにチンパンジーが人を殺めたかん満々で不安感じていたらチンパンジーがふっとこっちを見て目線があった時、あかん殺されるって思ったよね。

予告やポスターを見ていた感じ、オズの魔法使いのように竜巻に馬が巻き上げられて、それがどうも自然現象ではなく"何か"に乗る仕業って感じがしていたため、え?チンパンジー???ってなった。

主人公(OJ)は馬の調教師をしていた父親の跡を継いで調教師をしているんだけど、不幸な事故で父が死んで以来明るさを失い農場も上手くいっていない状況。父親凄い人だったんかな?と予感させて起きながら父親に関する情報が作中で「妹と同じく死ぬほど頑固」しかなかったので、なんでそんな主人公ダメージ受けて...え...?って軽く戸惑った。

ウォーキング・デッドで一躍有名になり近年ではミナリで名を挙げたスティーブン・ユアンが、これまたいい役どころだった。幼少期の冒頭のチンパンジーと共演しているのよ。

この映画で私が受け取った映画のテーマのひとつが「人間はすぐ驕る」ってこと。チンパンジーしかり馬しかり、人はなんでも「動物なんだから人間様が調教できて当たり前」って思ってる雰囲気がばりばり出てた。

その驕りからチンパンジーは人に利用されて限界が来て人を殺してしまう。んで、その場にいて五体満足で生還できたユアンはまるで学ばず大人になった今、まさかの「地球外生命体」を手懐けようとし奢り偉そうに「あいつは俺の言うことを聞く!」と金儲けに走りしっぺ返しを食らう。人間学ばなすぎて愛おし~~~!!!(嫌味)

主人公兄妹はそのユアン(役名忘れた)の驕りに知らず知らずのうちに巻き込まれ、父を失い、地球外生命体に「ここは俺の縄張りだから」と付け狙われ、出会った友人巻き込んで、なんならプロのカメラマンも引き入れてバズった動画を取ろうと画策する。ここだけ読むと「若気の至りかな?」ってな感じなんだけど、コミカルさゼロで進むので、そこはかとなく着いていけない感も確かにあった。

肝心の地球外生命体に関して言うと、最初は怖かった。見た目UFOなんだけど、どうやら違うぞ?ってのが常に付きまとって不気味で、いやあれは乗り物ではなくて宇宙人そのものだ!ってなるまでがピークだったかな。

ラストのメタモルフォーゼした宇宙人、めっちゃ手作り感すごくて、なんか伝説のポケモンみたいだった。お口パカーする時の緑のビロビロに運動会身を感じたのは、うーん何故だ。

ってか、宇宙人さ。めちゃくちゃ追ってくるくせに目が会わなきゃ食べないとかこだわり強。しかも自分が目と認識すればなのでこだわり強い割に判定ガバガバで笑う。馬に乗って走るOJのフードに描かれた(縫われた?)緑の丸を「目だ!目が合ったー!」って大喜びで追ってくるの可愛すぎて愛おしい。

宇宙人くん多分少し頭弱いタイプの宇宙人だったのかなー?って感じた。目が合えば食う、縄張りに入ってきた(OJたちの方が先に住んでたんだけどね)ら怒る、満足したら帰る、呼ばれたら現れるなどなど行動がとてもシンプルだったのよな。

だからかOJも1、2回エンカウントしただけで「あいつピロピロしたもん口の中に入れると体内傷ついて嫌がるからフラッグで対抗したろ」などと言い出しちゃう。しかも成功しちゃう。OJがそういう専門家ならまだしも、普通の馬に詳しい一般人なので今思うと違和感あった。

「動画撮ってバズらす」が目的だったのでプロのカメラマンにも来てもらうんだけど、この人がまあ凄い。ノリノリで撮ったかと思うきやテンションぶち上がって「お前たちに魔法を見せてやるぜ!」とファンキーなノリで食われに行くのまじで何事?だった。

誰も望んでないのにキャッキャっと食われに行くし、誰も彼のその行動を称えないし、なんなら食われる直前直後の映像を捉えたカメラに関しては言及がなかったので、何してんだこのじいちゃん!?って笑いこらえたの、良き思い出。

カメラマンさんの行動はめちゃくちゃ突飛だったけど、誰よりも真面目に自分の欲に忠実で己の命をかけちゃうの凄いとは思ったわ。

最初は【バズる動画を撮る!】が目的だったのに兄妹(特に妹)が、なぞの殺意を湧かせて「お前を絶対に殺す!」と盗んだバイクで走り出し写真にその姿を収めようと努力しながら命がけで頑張るのもなかなか、謎展開だった。もう動画バズらすとかそっちのけやんか。

細かいところを思い出す度に「なんで!??」ってなる所もあるんだけど、それでもだいぶ楽しめたしメッセージはとても強かったと思う。

人間が人間の面倒を見たり、言うことを聞かせようとしたり、何かを教えたりまなばせたりするのも難しいってのに、なぜ動物ならいける!と思ってしまうんだろ。

人間が問題を起こしても「人権が…」で許されるのに動物が問題を起こす(例えば人を襲ったりなど)と途端に「殺処分!」になるのも凄く人間様の都合主義だし自分勝手だよなぁと落ち込んでしまったわ。私がよく陥る「人間やだ」に見事に陥ってしまった。人間やだ、人間怖い。

なんか上手くまとまらないけど、ジョーダン・ピール監督作品を見ると毎度思うことが多くてずっとあと引いてぐるぐる考え込んでしまうの、なんか気持ちよくて好き。

ただ、これまでに観た「ゲットアウト」「us」
に比べたら衝撃度は低かった。人の怖さ、そこの知れなさの描かれ方が、今回は個性的な宇宙人という存在のインパクトに霞んでしまってた気がした。点と点とを繋いでいくと「どいつもこいつも人間ってやつは欲深い!」ってのが見えてくるんだけども、表面上それが見えにくくて、人によってはこの映画訳分からんってなるかも。

個人的には精神的に怖がらせにくるホラーや、人間の底知れぬ欲望や凶暴性が垣間見えるホラーが好みなので、今作はそういった点では物足りなさはあった。でもやっぱり世界観やテーマや伝えたいことが好みで「この映画好きやー!!!」って元気に映画館を出れたので満足感高かった。

映画観た後にここまで深く考えて、他人の考えを聞いてみたい!考察を知りたい!感じたことを夜通し語りたい!って思って作品は久々だったので、観て一週間近く経つ今でも興奮冷めやらん。こんなん感情、ミッドサマー以来かも。

ジョーダン・ピール単独の監督作品では無いけれどもAmazonプライムで配信中のドラマ「トワイライトゾーン」も近々観たい…観る…っ。
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