akihiko810

さかなのこのakihiko810のレビュー・感想・評価

さかなのこ(2022年製作の映画)
4.3
沖田修一監督。のん主演。 さかなクンの半生を映画化。

お魚が大好きな小学生“ミー坊”は、寝ても覚めてもお魚のことばかり。お魚を、毎日見つめて、毎日描い て、毎日食べて。他の子供と少し違うことを心配する父親とは対照的に、母親はそんなミー坊を温かく見守り、 心配するよりもむしろその背中を押し続けるのだった。高校生になり相変わらずお魚に夢中のミー坊は、町の不良ともなぜか仲良し、まるで何かの主人公のようにいつの間にか中心にいる。やがて1人暮らしを始めたミー 坊は、思いがけない出会いや再会の中で、たくさんの人に愛されながら、ミー坊だけが進むことのできるただ一 つの道にまっすぐに飛び込んで行くーー。

この作品は素晴らしい。
まずは、のんの存在感。もう本当に一途にわき目も振らずに好きなことしているんだな、というのを表現している。これは本当に、のんだからこその存在感が抜群に光っている。
次に、人間ドラマとしての完成度。ミー坊の母、同級生など、本当に「いい人」しかいない世界。あたたかい世界がミー坊を包んでいる。
そして最後に(なによりこれが本作を快作にしているポイントだと思っているが)、さかなクンが「ギョギョおじさん」という「<さかなクン>になれなかったさかなクン」という役で出演していること。もうこれだけで100点あげたい。「ギョギョおじさん」は「さかなクンになれなかったさかなクン」なので、大人の世界では単なる不審者に過ぎない。そこに本作が「あたたかいドラマ」なだけでない、シビアな現実の視点が持ち込まれていて、本作を単なる感動作でなく「快作」の域にまで引き上げていると思う。

好きなことをずっと好きでいる、という(実際の現実では困難な)きらめきを、まっすぐに表現した本作は間違いなく傑作である。
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