烏丸メヰ

宇宙探索編集部の烏丸メヰのレビュー・感想・評価

宇宙探索編集部(2021年製作の映画)
2.6
「宇宙」や「宇宙人」といったSF要素は全体の2割無いくらいで、ほとんどはクセ強変わり者ポンコツ人間達が田舎と山奥で繰り広げる群像劇ロードムービー。

邦画によくある
“ヒロイックさのない人物の集まりによる規模の狭い人間関係だけで起承転結とリフレッシュや人間関係間のオチを描く(があくまでも世間の片隅の小規模な話)”
というヒューマンドラマに質感が近く、こういった作品を登場人物に感情移入して楽しみカタルシスに並走できる人ならかなり楽しめる感じがする。
そのくらい、登場人物達が個性的で、良い意味でわざわざ人物を細かく描写している。

個人的に上記の邦画が合わないのと、『ムー』とのコラボがあったため勝手に「MMR的なオッサンのSFネタ満載コメディ」を予想してしまっていたせいで、かなり人間ドラマが長くSF要素の少ない内輪やりとり、といった印象を受けてしまった。感情移入できたのも常識的な価値観を持ってる眼鏡屋のおばさんのみ。

それでも最後まで観て、ああ観て良かったなと思えたのは所々輝く
“低予算なのに見せ方の楽しい笑わせ(曲がり角を曲がってくるのが最初救急車→消防車→重機、という「おお事になってきた感」の演出の楽しさ等)”
や、描きたい事を分かりやすく見せてくれた爽やかなラスト。

映像では「玄関に行きドアを開ける」という一つの動作をちょくちょく3カットくらいに割る、堤幸彦作品のようなカクカクしたカット割りには始終慣れなかったのだが、だからこそ最後の、光の中の長いワンカットが雄弁に心に残る。

小規模ヒューマンドラマが苦手で、良さを拾いきれないのが悔しいが、観て良かったし楽しいと思えた。
劇中、西遊記の扮装をした人々が印象的に映り、かの地に仏像があったり、ロバに乗ったタン先生の姿などは、原題を見るにやはり西遊記テイストというかオマージュなのかな(笑)?あの乗り物おじさんは観世音菩薩のオマージュ(笑)??

壮大な夢を描くちっぽけな男が触れた壮大な宇宙の片鱗。
それでも男はちっぽけで、けれどちっぽけな私達人間の営みは砂粒のように幾つも幾つも、壮大な宇宙の中で光っては消え、でも確実に……宇宙の一部として在り続ける。
烏丸メヰ

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