柾木嶺

ザリガニの鳴くところの柾木嶺のレビュー・感想・評価

ザリガニの鳴くところ(2022年製作の映画)
3.0
ミステリーというよりはサスペンス。
湿地帯の映像としての美しさや、そこで生きてきた主人公の歪な強さに惹かれる作品。

法廷パートと主人公の生い立ちパートに別れているが、重要なのは主人公パート。彼女は母親に捨てられ、父親・幼なじみ・地元のボンボンの3人の男に翻弄されながら、湿地帯にただ1人住みながら生き残るための自然の論理を身につける。
この湿地帯という舞台をいくつもの側面で映し出す映像がまず素晴らしい。
そして美しくも野性味を持つ主人公の演技がそこに上手くハマっている。
(野性味というとどうしても猛獣感が出てしまうので、実は適切な用語がないように思っている。それこそザリガニやワニが近いか?)

逆に法廷パートは比重も軽いしそこまで見応えのあるシーンはない。それが勿体ない。
ここからはネタバレだが、最後の最後で実は主人公が殺人犯だったという事実が明かされる。
ただこれに驚きはない。というのも法廷で提示されるのはどれもとにかく曖昧で適当な証拠だけだからだ。つまりどう考えても推定無罪にしか持っていけない証拠しかない。
だがそれはあくまで推定無罪なだけであり、例えば主人公が本当に犯人らしい、あるいは逆に不審死らしい証拠などは全く出てこない。

主人公を裁くことは出来ないが主人公以外の要因で死んだとも全く思えない。だからどんでん返しとして弱いし、さすがに60年代の裁判とはいえ頭悪いなあとなってしまった。
ここだけが唯一この作品の悪いところだと思う。
柾木嶺

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