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リバー、流れないでよのohassyのレビュー・感想・評価

リバー、流れないでよ(2023年製作の映画)
4.5
あまりの面白さと超絶技巧、超難しい撮影に一丸となって取り組む姿に、心底感動してしまった。
「カメラを止めるな」くらい騒がれても良いのでは?

「2分間のループが続く」というアイデアでよくできた話を作る、という小手先のテクニックに留まらないのが、ヨーロッパ企画・上田誠の凄みである。

僕たちの日々の生活というのは、毎日学校に行ったり、同じような仕事が続いたりの連続で、夢のある未来への展望なんてどこにもない、と思ってしまうこともある。
特に若い時は。
しかし実はそんなことはなくて、日々の繰り返しの中には必ず積み重寝ている部分があって、その積み重ねがきっかけで、あるときは大きな成果に、あるときは次への旅立ちへと発展するのだ。

よく考えればそんなことは当たり前なのだけれど、昨日と今日の違いが小さすぎて、僕たちはつい見逃してしまう。
あるいは成果の小ささに絶望して、無かったことにしてしまう。
でも昨日の経験は必ず今日に生きているわけで、むしろ繰り返しの中でこそ学びや修練が可能であることを、本作は教えてくれる。

軽妙なコメデューから地獄の絶望、甘酸っぱい恋愛までを実に絶妙に描きつつ、大きなクライマックスへと向かう上田節の気持ちよさ。
劇団員だからこそできる演技と演出。
震える。

帰宅してすぐ、急いで前作の「ドロステのはてで僕ら」を、加入したばかりのU-NEXTで鑑賞した。
個人的には「リバー、〜」の方が好みだが、実験的な作品に果敢に挑戦する姿勢と本作以上に入り組んだ設定を見事に物語に昇華させる手腕には、開いた口が塞がらない思いだ。
何より「ドロステの〜」がなければ本作は生まれないわけで、最高であることは間違いがない。

ヨーロッパ企画の舞台作で覚えているのは「ビルのゲーツ」という作品で、高層ビルに閉じ込められた男女が、各階のビルのゲートを協力して開けながら屋上を目指すという作品だった。
これも、一つの舞台装置をうまく活用して、同じ状況を少しずつ変化させ、経験を積み上げながらゴールを目指すという物だったから、根底に本作に通ずるものがある。
舞台というのは場所が同じという制限があるからこそ、例え環境が変わらなくともストーリーは作れるしドラマチックにもなるという、僕らの生活にフィットするような作品が生まれるのかもしれない。

ロケーションもいいですね。
若おかみは小学生!のリサーチで有馬温泉の旅館を見せていただいたのだけれど、バックヤードがちょうど良く雑然としつつ入り組んだ構造になっていたのを思い出した。
建物の構造をうまくシナリオに生かしている。

しばらく腑抜けになっていたけど元気になったし、仕事のやる気も出た。
ありがとうございます。
観るの遅くなってごめん、次から初週のうちに必ず。
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