菩薩

私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスターの菩薩のレビュー・感想・評価

4.2
『クリスマス・ストーリー』の変奏かと思いきやそういう訳でもない、もっと普遍的な愛と憎、生と死、心と体との距離について。肉親の死をもって決定的となった2人の関係性は再び肉親の死をもって修復される。2人がどうして憎しみあわねばならないかと言えば愛し合う訳にはいかないからで、だからこそ「仲直り」を果たした後の擬似近親相姦を経た後には遠路遥々アフリカへと肉体的距離を飛ばす。近過ぎるが故に愛し合い憎み、離れたからこそまた愛し合い憎み合う、何処までも人間的な営みの先には確実な死が待ち受けている、が。ここに理由を求めるならば当然説明責任を果たしていないし、子供じみた…も当然の叱責として浴びせられるべきであろうが、これはもう「あなたは私ではなく私はあなたではない」という当然の事象として、自分には凄く自然に浸透してくる話だった。『あの頃エッフェル塔の下で』に至る「愛し合わずにいられない(仮称)」の一つの潮流があるとしたら、こちらもこちらでデプレシャンらしい「ぶつかり合わずにいられない(仮称)」の潮流であり支流、ひたすら過剰な演技の積み重ねも途中からいいアクセントになってくる。理性ではなく感情の生物としての人間の姿について。
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