Omizu

揺れるときのOmizuのレビュー・感想・評価

揺れるとき(2021年製作の映画)
5.0
【第74回カンヌ映画祭 批評家週間スペシャル・スクリーニング作品】
監督は俳優として活躍し、本作が長編二作目となるサミュエル・タイス。監督デビュー作『Party Girl』がカンヌ映画祭でカメラドールを受賞している。

早くも今年ベストかもしれない。ネグレクト気味の美少年が抱える家庭環境や自身のセクシャリティにまつわる辛さを描きつつ、そっと気持ちに寄り添った優しさもある素晴らしい作品。

セザール賞で有望男優賞にノミネートされた主役の男の子がとにかくいい。長い金髪をたなびかせ、苦しい現実を生きようとする。

母親は子供たちをジョニーに任せ恋人を連れ込んでいる。ジョニーの兄は不良たちとたむろし、妹はまだ幼い。そんな中新しく現われた担任を慕うようになるが…

ジョニーの苦しみを繊細に、雄弁に語りきっている。母親に対する不満と先生に対する思いが爆発する食卓のシーンは凄まじかった。あの中学生の女の子もよかった。いかにもフランスのおませな女の子って感じ。

ジョニーが先生に見てほしくてがんばって誘惑するところが辛かった。ジョニーの気持ちは痛いほど分かるし、先生の気持ちも分かる。傷つける気はなくとも10歳の少年とそんな関係になったら…

傷つき激しく落ち込んだジョニーはそれでも今の状況を脱しようともがく。最後にみせるダンスは覚悟のダンスだ。このクソな生活から抜け出してやる。そんな前向きで希望に満ちたラストだった。

非常に辛い話ではあるが、少年に寄り添った語り口が実に素晴らしく、ジョニーを演じた子もすごくいい。この監督の今後に大いに期待したい。
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