アカデミー長編ドキュメンタリー映画賞を受賞した作品。
ナワリヌイという人物が毒殺されかけたというのは報道で聞いていたが、詳しいことはよく知らなかった。この作品を見れば詳細が全部分かる。
これこそがドキュメンタリー。フィクションでもここまで恐ろしいことはないかもしれない。
毒を盛られて瀕死だったナワリヌイが回復後にインタビューで語っていた内容を見るに、反体制派としてプーチンから目を付けられる予測は出来ていても、毒殺されかけるとは想像していなかったというような証言がある。
リハビリを終え、危険な身であるにもかかわらずロシアへの帰国を決意するナワリヌイ。
そして案の定、空港で入国審査を受けている最中に彼は連行され、裁判にかけられ、投獄され、現在も刑務所にいる。
彼はこの状況を果たして予想していたのだろうか。覚悟はしていたかもしれないが、毒殺未遂の時と同様に「さすがにそこまでは」と思っていたのだろうか。
観る側としては刑務所にいることを知った上で映画を見ていたから、なんともやりきれない感情で見入ってしまう。
ロシアがウクライナに侵攻して1年が過ぎ、欧米から制裁を食らってもそれほど痛手になっている様子を見せず、プーチン政権はロシアを支配し続けている。
声を上げるだけで捕らえられ、最悪の場合は命を奪われる。
そういう国だと再認識させられる。あと何年、こういう状況が続くのだろうか。誰が転換できるのだろうか。考えさせられる。
【2024年追記】
2月16日、ナワリヌイ氏は獄中で急死したと発表された。
プーチンが殺害した、と世界中から批判されている。
ロシアは変わるのだろうか。変わらない気もする。
ナワリヌイ氏のご冥福をお祈りします。