りょう

夜明けまでバス停でのりょうのレビュー・感想・評価

夜明けまでバス停で(2022年製作の映画)
3.0
 2020年2月頃のコロナ禍のはじまりを思いだしました。もうあの頃のことを忘れかけている自分にも驚かされました。この居酒屋でアルバイトをしていた女性たちのように、突然に困難な境遇になった人たちは、あれからどうなったのか…。社会問題が多すぎて、マスコミも追跡できていないのかもしれません。
 ただ、この作品の脚本や演出には、あまり共感できませんでした。雇用主の都合で解雇されたのなら、退職金を請求するのが当たりまえだし、彼女たちくらいの労働時間なら失業手当も支給されるはずです。すぐにホームレスなんてないし、美知子には親族も友人もいるので、誰かの支援も得られたはずです。少し設定に無理がある印象でした。
 実在する政治家を批判することは必要ですが、その論調がさんざん言われてきたことばかりで、なんのひねりもありません。もう少し制作者のメッセージだとか独創性がなければ、フィクションの演出としては凡庸すぎます。
 三里塚闘争のエピソードと現代社会のつながりは、彼のセリフでは支離滅裂でした。美知子が爆弾テロに興味をもつきっかけにしたかったのかもしれませんが、少し唐突すぎる印象です。エンディングの映像もそれまでの展開から飛躍しすぎているので、物語のテーマが曖昧になっています。コロナ禍をきっかけとした貧困や格差社会などをテーマにするなら、もっと庶民の現実を丁寧に描いてほしかったです。
 ちなみに、美知子を演じた板谷由夏さんが菊地凛子さんにそっくりだったし、居酒屋のマネージャーを演じた三浦貴大さんは小出恵介さんに似ていると思いました。
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