りょう

遠いところのりょうのレビュー・感想・評価

遠いところ(2022年製作の映画)
3.6
 仕事で訪問した都道府県は、しばらく46でとまっていましたが、2023年7月に最後の沖縄県に出張があって、ようやく47を達成しました。日帰りだったので、那覇の市街地や観光地をめぐることはできませんでしたが…。
 なぜか物理的なもの以上に距離を感じてしまう地域です。仕事で沖縄の出身者と一緒になることも少なくないので、独特の社会的な背景があることも理解しているつもりですが、この作品の描写はかなり辛辣でした。
 アオイの日常が淡々と描かれているので、彼女の周辺の登場人物も似たような境遇ばかりなのかもしれませんが、まるでこれが沖縄の普遍的な社会のようでした。彼ら彼女らの行動原理などを理解するためには、もう少し沖縄の構造的な社会問題を提起する映像もほしかったです。
 わずか52年前までアメリカの占領地だったので、いまだ戦後復興できていないということなのでしょう。米軍基地の過重な負担も放置され、政府がちゃんと沖縄振興をしてこなかった結果として、彼女たちのように人権が尊重されない社会構造が固定化してしまっている印象です。クズのような人間ばかり登場するし、アオイの言動も日常的な児童虐待ですが、誰が悪かったとは簡単に言えない雰囲気です。
 アオイの息子を演じた子役さんは、決して“演じた”わけではないと思いますが、こんな自然な仕草をどんなふうに撮影したのか興味深いです。ただ、かなり暴力的なシーンにも直面しているので、撮影中のケアとか心配になりました。とりわけ海のエンディングは、さすがに2歳の幼児には危険だったんじゃないかと…。
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