このレビューはネタバレを含みます
最高。
素晴らしい。
訳あってシチリア島のアルタモンテという港町で瀕死の重傷をすんでのところで救われたマッコール。
傷の回復を待ちながら、終の住処とでも言わんばかりにこの小さな町を気に入ってとけ込んで行く。
このアルタモンテという小さな町の描写が素晴らしい。
素朴でのどかでありながら、人々が生き生きと懸命に日々を生きており、町に生きる人々の善性、そして町特有であろう心地よい空気と時間が流れているのが伝わってくる。
今すぐにでもこんなところで過ごしてみたいと思わせるほど魅力的だ。
そしてマッコールも、この町をすっかり気に入り、余生をここで過ごしたいという気持ちを言葉にする。
そう長くはない時間ながら、町の人々の温かさに触れ、町のゆったりとしてそれでいて活気のある生活に入り込んでいくうちにそう思わせるのだが、それに全く違和感がない。
舞台となったこのアルタモンテの描写は素晴らしく魅力的に仕上がっている。
シリーズを通して、1作目では若い娼婦を、2作目では隣人である少年を守るために戦ったマッコール、本作ではこの愛すべきアルタモンテの町そして人々を守るためにマフィアと戦うこととなる。
マフィアが思っていたよりは弱かったのがちょっと残念ではあるのだが、これ以上悪さをされてもアルタモンテの人々が辛い思いをする、と見ているこちらも胸の内は苦しいところである。
そしてマッコールがそもそもシチリア島に出向いた理由、これがサイバー犯罪により消えたとあるレンガ職人の年金36万6400米ドルを取り返すことであったのだが、終盤も終盤、CIAの後進エージェントのコリンズがこれを職人夫妻に手渡すシーンはまさしくマッコールの持つ正義・善性を象徴するものであり、つい涙ぐんでしまった。
そしてコリンズがシリーズ前作で襲撃を受けて亡くなったマッコールの親友、スーザンの娘であることが示されるシーンに畳み掛けられて、涙が頬に落ちるに至った。
美しい町と人々の営み、そして大切なものを守ろうとする心、善性、そうしたものに胸打たれる素晴らしい作品だった。
マッコールとアルタモンテの人々が、ゆったりとした時間の中で生き生きと暮らしているであろうことを願って止まない。