2024年98本目
グロテスクかつ幻想的で美しいディストピアSF映画で、呼吸するように蠢く植物のビジュアルが『風の谷のナウシカ』の腐海を思わせる。こういう崩壊した世界の断片を見せる映画は好き。お話を書き込みすぎず、あくまで断片にとどめていることで、世界の構造の巨大さや無慈悲さと、個人の無力さを対比させているところが良い。ストーリーが薄味で、ほとんど問題が解決しないまま終わってしまうので物足りなく感じる人もいそうだが、それこそが魅力だろう。ラストシーンのシタデルと湿地のコントラストと、ヴェスパーの切なくも決意に満ちた表情が美しく、余韻がある。