MitsuhiroTani

Dr.コトー診療所のMitsuhiroTaniのネタバレレビュー・内容・結末

Dr.コトー診療所(2022年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

コトーシリーズは大好きだっただけに辛口を。
Dr.コトーの背景にある、誰もが触れない本質的な問題をぶっちゃけておきながら、答えも希望も一切用意することなく幕を引く。ある意味凄い怪作だった。
「この島はよ、日本の最先端行ってんだぞ、この野郎。少々高齢化も過疎も日本の未来の姿なんだよ。」極めて的を得たような言葉が放つ泉谷しげるらが、嵐の中で奮闘する末期の病に苦しむコトーを遠め眺め、何もせず応援するだけ。
そして「先生の気持ちは分かる。島の人たちを置いて出ていかないことも、診療所が心配なことも。一人で頑張ろうとしないで、今はとにかく自分のことを」という柴崎コウもまた、自分とお腹の子との三人の暮らしが大事。島人の誰もが、自分のためのコトーが大事であり、人間コトー自身のことを心配していない。
唯一、新米医だけが、我が身を重ね、こうした医療体制に疑問を抱き声を上げるも、島人の同調圧力に飲まれてしまう。
末期の病は何事もなかったように、医学を学ぶ学費の問題もうやむやに、そして、離島医療の体制は変革の様子も見えず。全てが奇跡的に洗い流されていく。
嵐が去り、晴れ渡った島で、何ごともなかったように笑顔を取り戻す島人達には、血を吸い尽くす寄生虫のように見え、恐怖すら感じた。
これから未来ある若い医師は、誰もあんな島に行きたがらなくなるのではないか。
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