胃潰瘍のサンタ

ハントの胃潰瘍のサンタのレビュー・感想・評価

ハント(2022年製作の映画)
4.2
イ・ジョンジェの監督デビュー作は、実に韓国映画らしい、力技のエンタメ映画。
実話ベースのシリアスなスパイ映画なのかと思ってたら、隠密作戦中に東京のド真ん中で『ヒート』みたいな銃撃戦を始めるわ、上司ぶん殴るわ、挙げ句ラストの爆発は全員死んでそうな規模だわでかなり荒唐無稽。だが次々と展開していくので飽きさせない。
もっともその展開も中盤以降かなり強引なひっくり返しの連続で、「これだと前半ほとんど意味ないんでは……」と思うほど。だがその時点で既に、イ・ジョンジェとチョン・ウソンの顔を見ているだけでグッと来るほど感情移入。役者の顔だけでこの熱さと渋さを表現できるのは、今や韓国だけだろう。

撮影はイ・モゲ、音楽はチョ・ヨンウクとエース級が集まっているので、演出は監督デビューといえど危なげない。テンポも良すぎるほど良い。
ただクライマックスでの空間/動作設計が若干雑で、イ・ジョンジェが事の顛末をただ眺めているだけのような不自然な「間」ができてしまった点には「デビュー作らしさ」を感じた。

そういう細かい不満はしかし、全て吹き飛ばして「面白かった〜!」と思わせちゃうのが強いところ。

ファン・ジョンミンとかイ・ソンミンとか、明らかに豪華な友情出演も笑える。