ステラー

SHE SAID/シー・セッド その名を暴けのステラーのレビュー・感想・評価

4.5
記者は偉くない。
誰よりも勇敢なのは実名で告発を決心した当事者である。記事公開後にどのような被害に巻き込まれるかなど予想もできない。
終盤の電話シーンは心が震えた。

でも、記者は当事者の勇気を第三者として伝える役割とパワーを持つ。
どんなにタフな環境でも信念のもとにやり遂げる二人がカッコ良すぎた。
(というか、所作全てが好き。リンゴかじって、まだ可食部たくさん残ってるのに思いっきりゴミ箱に捨てるシーンとかを含めて好き。)

ただ、やはり記者かっこいいでは終わってはならない映画だと思う。
記事にして一番怖いのは「社会が関心を示さないこと」と記者は言う。
被害者が勇気を出した末に何も変わらなければ、立ち直る気力も壊れる。
記者の能力的な部分で多少は変わるかもしれないが、社会に無関心が蔓延れば報道は存在価値を失う。
その意味で、この映画をできるだけ多くの人に見てほしいと心の底から感じた。
(でも、見てって布教するの恥ずかしい自分もいるから「勇気すごい」なんて言える立場じゃない…)

あともう1つ。スティグマについても書き残したい。「金のために性的な誘惑をする」というレッテルをスティグマとして見れば「なんて奴らはひどいんだ」となる。
それでも、普段生きている中で頭の中で自動的に作られるスティグマなんて自分はいくらでも持ってる気がする。
自戒を込めて。そして、指摘されたときに素直にそれを受け入れられるように。
ステラー

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