ルークシュポール

Pearl パールのルークシュポールのネタバレレビュー・内容・結末

Pearl パール(2022年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

怖いというより終始辛い話だった 

本性がどうこうより、やはり過度に抑圧されたからパールはあそこまで煮詰まってしまったのでは?母親が怪物だと思って育てたから、パールは本当に怪物になってしまったと思う。もう少し自由があれば、難しい性格でも殺人鬼にはなっていなかったのではないか。オーディションの後のなさ、「これに落ちても次受ければ良いや、もニューヨークでもハリウッドでもヨーロッパでも行ってやる」とならないのは、やはりこれまでの束縛のせいでは?時代背景やハワードの存在も当然あるだろうけど
もらったのに母親が放置したために蛆が湧いてゆく豚がメタファーなのかな
母親の激白がよかった ただ単に「私はあなたの幸せを思って!」一辺倒ではなく、自分もまた抑圧されていることを自覚しているあたりが新しいような

悲劇の原因は第一次世界大戦も大きいと思う。世界戦争のトラウマの一環というか。戦争って本当に嫌だね
母親の抑圧の一因も「自分たちはドイツ系で差別されてるから、慎ましく暮らさなければならない」だし、オーディションに落とされた理由も「君のダンスは素晴らしいが、もっとブロンドのアメリカらしい娘が欲しい」と自分ではどうにもできないアイデンティティの否定だったし
だからクライマックスの子守唄はドイツ語だったのかな…母親が大事なこと言う時はいつもドイツ語だし

ハワードがぱっと見無傷で帰ってきたのは意外だった 彼も戦場のトラウマがあるのだろうが
彼にも何か問題がありパールを虐待でもしていたのかと思っていたが、この映画の時点ではそうでもなさそう?彼のことは愛しているが帰ってこないで死んでほしいという、卵を潰す描写も良かったな

「スターになるの」というキャッチコピーから、街で大量殺人or有名人殺害→死刑になる=スターになると思ってた(X未見だったのに加え少し前に観た『私、オルガ・ヘプナロヴァー』の印象が強すぎたので)
両親はともかく、彼女が殺したのは技師やミッツィーのような彼女に困惑していたが、否定していたとは言えない人たちで、オーディションの審査員のようにばっさり拒絶する人ではないことに気づいた
観ていた時は審査員を皆殺しかと思っていたし、その方が爽快感は増したのだろうが、あえてそうしなかったのだろうな