りょう

ぬいぐるみとしゃべる人はやさしいのりょうのレビュー・感想・評価

3.0
 現代の若者が感じる“生きづらさ”を表現した作品だったのでしょうか。さまざまな要素が反映されていて、とても興味深いテーマでしたが、残念ながら登場人物のバックグラウンドが描かれていないので、彼らの心情を理解しづらかったです。なんとなく感受性を試されている気分にもなりました。
 七森はアセクシュアルなのかもしれませんが、自分でも半信半疑なところがありました。それぞれに事情はありそうですが、いわゆるコミュ障の若者たちが他人を傷つけることを恐れて、はなし相手をぬいぐるみにしてしまうということなのでしょう。とても奇想天外なようですが、気持ちのアウトプットとしてはセラピーのような効果があるはずです。人間どうしのコミュニケーションの必要性に薄々気付きはじめますが、そんな単純ならこんなサークルにはならないはずです。
 1人だけ異質な存在だった白城は、七森のことも麦戸のことも理解しているようでしたが、彼らを“やさしさ”から解放するって、ほとんど聖人のようなセリフが少し嘘っぽい印象でした。タイトルにもつながるところなので、ここにリアリティが欲しかったです。
 彼らは、ぬいぐるみのことを“この子たち”などと言っていましたが、自分のパートナーなら、ちゃんと対等の関係を意識すべきです。ペットの飼主を“パパ”“ママ”とすることの違和感に似ていました。
 どうにも馴染めないテンポだったこともあって、この演出や映像からすると、原作の脚色うんぬんよりも、映画化そのものに難点があったような印象です。
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