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彼岸花 ニューデジタルリマスターのharunomaのレビュー・感想・評価

4.9
岡田茉莉子か山本富士子かという永遠の時のクレヴァスの中で、決戦は岡田茉莉子となる。

あらゆる歌(能の高砂、歌舞伎の京鹿子娘道成寺、詩吟「芳山楠帶刀の歌」、桜井の訣別まで)が通奏低音として存在し、そして船は行く。
(松竹、東宝、大映、新東宝、東映)の五社協定カルテルという昭和バカが女優生命を殺してしまった。63年この時点で大映は死んだ。「そんなことで映画に出られなくなっても仕方ありません。自分の立場は自分で守ります。その方が生きがいがあるし、人間的であると思います。」山本富士子
小津のカラー作品の中『彼岸花』(1958)『秋日和』(1960)『秋刀魚の味』(1962)は、どれも10回以上は見ていると思う。

東京暮色しか認識のない有馬稲子が、その次の年に「彼岸花」に主演していることを、あろうことか今まで認知していなかったことに愕然とした。歴史認識の諸相を変えざるを得ず、そんなことがあるのか、東京暮色とは全然別の女優として見ていた。
ところで小津における山田五十鈴はどこに行ったのか、京マチ子以上に気になる。
今回は不可視への穴へのまなざしが一番強かったのは、箱根の田中絹代だが、その体躯の立場設定上も現在の宮崎あおいを想起させる。
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