エイプリル

ヴィーガンズ・ハムのエイプリルのネタバレレビュー・内容・結末

ヴィーガンズ・ハム(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

視聴前、普通にギャグ映画だと思っていたので普通に人体損傷シーンが出てきまくりでビビりました。
ある意味革命的な作品というか、どこに着地する映画なのか最後まで分からなくて新鮮でした。こういう猟奇的な映画はたくさんある一方、主人公たちがそれらの行為をポップに行っていたり、初めのうちは主人公が殺人を躊躇っていたりと、ホラーやサスペンスの文脈で作られていないのが面白かったです。この主人公のためらいがかなりリアルで、人を惨殺しまくる映画よりもよっぽど「殺人って怖いことなんだ」と思わされました。

この作品、殺人をする=肉を食べるということになるんですが、つまり「人肉食をするということは人を殺すこと」という展開を徹底して描いています。人を殺すことの葛藤もそれに慣れていく様子も、殺された側の苦痛も全部描きます。
初めはヴィーガンに対する描き方がまあまあ露悪的なので、アンチヴィーガンな作品かと思っていたんですが全然そんなことはありませんでした。普通に肉食う自分も映画を通して「肉食って残酷で怖いかも」と思えるくらいに丁寧に描いていて感心しました。
ヴィーガンを食べるという行為は非常にキャッチーなテーマなのですが、それを通して肉食をするということの実態について描いているのは面白かったです。とはいえ「肉食はダメだよね」というメッセージ性をそこまで感じなかったのは、出てくるヴィーガンがみんなカスみたいな連中ばっかりだったからだと思います。すごいバランス感覚で作られてます。

奥さんはサイコパスじゃないんですけど、サイコパスのファンということでまあまあヤバい人物です。殺人を躊躇う主人公に「何を怖がってる」「見損なった」みたいな罵詈雑言の嵐で普通に悲しくなります。無理に決まってるだろ。新時代の冷たい熱帯魚だな…みたいな気持ちにもなりました。
ラストの「ウィニー」についても「ウィニーはかわいそうだった」みたいな意味かな?と捉えたのですが、この奥さんがそんな殊勝な考えするわけないので「ウィニーのペースメーカーさえなければ逃げ延びられたのに」という意味だと思ってます。

あと、ポスターの「人狩り行こうぜ!」、めっちゃ右上にひっそり書かれてて笑った。なんでそんな自信なさそうなところに書いてるんだよ。
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