映像と音響はバチバチに決まっていて、それだけで見る価値はあった。
演出が良かった反面、脚本の拙さが際立つ。
また、(映像で物語を紡げてはいないのに)セリフが不明瞭過ぎて終始何を言ってるのかよく分からないので物語の焦点が合っていなかった。
監督の説明を聞いても、見せたかったものは「渋谷の移り変わり」「薬物」「バイオレンス」などの要素であって、であればドキュメンタリーかPVで良い。
あの内容ではキャラクターがいて90分の物語になっている必然性を感じない。
せっかくの超絶かっこいいカット割も緩急が無く全編に渡ってずっと続くので物語に即した演出になっておらずダレてしまう。
「監督＝演出家」と捉えれば、1人で作った作品の脚本が破綻しているのは問題ないのかもしれないが、余りにもストーリーテリングの側面を放り投げているので90分の作品である必要性を感じない。
途中の銃を調達するくだりは長い割に中身が無いので全カットでも物語上差し障りない。
とにかく物語の組み立てが下手な印象だった(しかし映像はやたらカッコいいので誤魔化せてしまっているのが更に良くない)。
30分以下の短編だったなら、この一辺倒な物語と演出でも成立はするかなと思った。
ともあれ、脱サラして少ない資金で7年かけて1人で作った事実は物凄い事だと思うし、単純に映像センスは抜群なので見る価値はある。
超上から目線だけど、この作家は良い映像が撮れてしまい、いくらでも誤魔化しが効いてしまう分、「物語」を撮れるようになるのは難しいのかもしれないと思った。
