いづる

ヒトラーのための虐殺会議のいづるのレビュー・感想・評価

ヒトラーのための虐殺会議(2022年製作の映画)
4.0
ヴァンゼー会議の議事録を基にドラマ化された作品。
ドキュメンタリーとも違い、ナレーションもなく、解説は最後に数行だけ。
音楽もなかったような。

人間の中に棲む悪魔が自分の責任ではない大義を理由にとんでもないことをそう思うことなく進めてしまう。

この会議の前からユダヤ人虐殺はされていた。この会議では人数が多いからもっと効率的な方法を実施することを結論ありきで議論している。

反論なく淡々と進められていたのかと思っていたが違った。しかし反論は人道的な観点からのものではない。本作を観てその恐ろしさを感じてもらいたい。

違う視点で考察すると、この会議では交渉とコンフリクトマネジメントのあらゆるテクニックが使われているように思える。反論には耳を傾けて相手の立場を慮る。しかし、論点の一部分だけを切り取り、それに対する見解を述べて、心配に及ばないこと、取るに足らないことと相手を煙に巻いている。テクニックもテクノロジーも使い方を間違えると大変なことになる例である。あえて間違った使い方をしている。

80年前の愚かな人たちの話ではあるが、同じようなことは今も繰り返されている。よその国だけでなく身近でも。

観る前は、観終わったら怒りに震えると思っていたのだが、実際はそうではなかった。ただ呆然と席を立って歩き始めた。無感情なのかと思ったら涙が出てきた。。。
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