「普通とは」「正しいとは」何か
…シンプルな苦しみを全ての大人に問いかける良い作品でした。キャスト全員の確かな表現力が作品を立体的にし繋いでいた。
印象的なセリフが２つ。
「誰にだって理由があるんだから、私は異常者を隔離すれば良いなんて思わない」
もう１つは新垣結衣の
「私はどこへも行かない」
→これは枕詞として「私はあなたの家族とは違って、大切な人と理解し合ってるのだから」というナイフのような言葉でした。
どちらも本作の中で唯一「大多数側」に居るオトナである稲垣吾郎に向けた核心のメッセージに聞こえた。
本作のテーマは「多様性」や「生きづらさ」だけでは無い深いものに思う。「違う」ということは、「大多数ではない」というただそれだけ。少数側の人が平和に生きられないのは、誰かが「普通」を定義付け、線を引くからだと。
でも、この作品は心の中や生い立ちに何か抱えて生きてきた人にしか届かないかもしれない、ちょっとニッチな題材ですね。今の日本には必要なことだけど。
キャストに目を向けると、佐藤寛太と東野絢香の大学生編の2人の演技に引き込まれました。2人とも魅力的。LDH所属の佐藤寛太は漫画的な作品への出演が多く勿体ない。北村匠海や吉沢亮、横浜流星に続くような内向的な役柄が似合うなと思う。重ためな役柄をどんどんこなして欲しい。彼の演技力の輝きは本作で嬉しい誤算でした。
そして新垣結衣ですね。
自分は彼女の演技が好きです。躓いたオトナの表現が昔から上手いよなと思います。納豆ご飯を食べる姿に魅了されてしまいました。笑
その他、脇役の徳永えり、宇野翔平の存在感の輝きよ。
邦画を見て決まって悲しくなるのは「お金があまりにもかけられてないこと」、「キャストの演技力が低い事、キャスト間でばらつきがあること」。本作はその点、満足感が高いです。
長くなりましたがきちんと劇場で見て良かった。
