MCらんた

ウィッシュのMCらんたのレビュー・感想・評価

ウィッシュ(2023年製作の映画)
3.0
"願えばいつか叶う"という作る方もまったく信じてないであろうテーゼを、願うこと=初期衝動や動機を持つことまで広げて、それを安寧と引き換えに奪う敵と言うのが上手い。やたら上手すぎて現代社会に置き換えた感じの構図が露骨で笑っちゃったけど好きなタイプの話だった。
"願えば叶う"は全く信じてないんだけど、一方で、願い=偶然性でスゲー奴と出会うかも。って地点は信じてるんだよね。スターは自分とウマが合う自分よりスゲー奴で、そういう奴と偶然出会う可能性は信じてるのが面白い。ブルーフェアリーの新しい解釈。

マグニフィコ王は、王と言いつつ失敗した親を教訓に誰よりも勉強して技術を身に着けて一代で伸し上がったテック系の社長で、月一のサブスクリプション形式で人々の夢を叶える代わりに"本当にやりたかったこと"を忘れさせて生活様式を支配したい。もう誰の目に見てもイーロンやザッカーバーグやペゾス。でも、生活安全圏の外=即・死みたいなイメージの強い中世風ファンタジー世界に持ってくるにはちょっと変換が足りなかったと思う。"王の方が正しい"みたいな声がそこそこ大きいらしいのは辟易するけど。
マグニフィコ王は、ヴィランのタイプでは「リメンバー・ミー」のデラクルスとか「トイ・ストーリー3」のロッツォみたいな、カリスマ性や統率力は本物で裏があるタイプだと思うんだけど、初めて独善性を見せるところ、引き返せない悪に手を出すところ、主人公と対峙して論破されるパターンのところ、いつも描写が短絡的というか一面的過ぎて卑近な悪のように描いてるので、かえって「本当は同情すべき人間なんだ」みたいな補完の余地を、視る側に与えちゃってる気がする。

あとやっぱり・・・ディズニー長編に期待する大きさに対しては絵がかなり弱い。印象に残るカットもないし、カートゥーンサルーンを横目に見てそうな絵画風のプロダクションデザインも・・・どうかな。マスコット枠のスターも癖が無い上に、効果音まで「マリオ」のチコと被ってるし。あと単純にハイファンタジーっぽい世界なのに舞台が凄く狭い。ほぼお城と家しかなくて、宮崎五郎の「ゲド戦記」といっしょの狭苦しさ。
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