ダイゴロウ

aftersun/アフターサンのダイゴロウのレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
4.1
昨年の話題作を今更ながら。

「最後の夏休みを再生する」
父と過ごした最後の夏休みを、ビデオテープを再生することで回想し、より彼のことを理解していく。

大人が、ただ大人の役割を演じる「いっぱしの人間」に過ぎないと分かったのは、そう昔のことではなかったように思う。
子供の頃に理解できなかった両親の苦悩が「いっぱしの大人」になってから改めて理解できる。そんな経験は決してドラマチックで特別なものではなく、誰しもが経験することではないだろうか。

本作の父親は、若くして一児の父親となり、母親とは結婚していない(あるいは離婚している)ように思われる。性的嗜好もマイノリティなのかも知れない。娘の台詞に対する反応から、貧しいことは間違いないであろう…。
そんな社会的に弱者であると思われる彼の確かな苦悩…。
子供の時分にそうした両親の社会的な立ち位置を理解するのは難しいし、きっと理解する必要もないのであろう。

苦しそうな顔で踊る彼に大人になった彼女が寄り添うエモーショナルなシーンがただただ美しい…。

ただ、本作において彼が最終的にどういう結末を迎えたのか分からない点は、少しずるいように思う。
この夏休み以降、彼女は父親に会っていないのは確かであるが、彼が自ら死を選んだのか、事故に遭ったのか、あるいは行方をくらましたのか判断しきれない部分がある。
当然主人公は彼の結末を知った上で回想しているものの、その点において鑑賞者は置いていかれてしまい、完全に寄り添うことができない構成になってしまっている点がどこか寂しく、気に入らない部分でした。