ヒノモト

ippoのヒノモトのレビュー・感想・評価

ippo(2022年製作の映画)
3.9
俳優として活躍されている柄本佑さんが監督された短編3作がまとめられた作品。

元々が戯曲を映画化したということもあって、演劇的側面が大変強く、3編ともにほぼ2人の会話劇であり、台詞の意図や所作の意味を深く読み解くために、後を引く余韻に溢れていました。

上演後のトークで監督からのお話によると、映画オリジナルの要素、映像だから表現できたことやこだわったカメラワークが随所に見られ、戯曲そのままではない映画ならではの意味を感じました。

映像だけではなく、環境音の存在も大きく、ミニマムな空間、フレームの外側に広がる世界を予見させる気配や強調として、立体的な奥行きのある作品群でした。

互いの気づきや、感じ方のズレのような些細な物語ではありますが、変化していく瞬間、瞬間のニュアンスを感じ取れた時の驚きは大きくて、また観直したいと思うほどの面白さがありました。

ただ、舞台空間の見えない制約のようなものを裏切る驚きがもう少しあると、映画っぽいダイナミズムに繋がるところではあるので、2編目の『約束』にあるような屋外ロケーションだからできる作品の良さが、他の作品にもあるとより良かったと思いました。
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