モロッコを舞台に、ハレの日に着る伝統的なカフタンドレスを手作業で作る仕立て屋とその妻、従業員の若手職人の青年の関係性を描くドラマ。
美しいカフタンドレスを作る過程とともに、秘めた三角関係を描く愛の物語だった。
「物語」と書いたけれど、伝統的なモロッコの社会では、セクシャルマイノリティについては明かせない、簡単には語ることが許されないんだろう、ということも伝わってきた。
仕立て屋のハリムが、性的な意味での関係性は妻のミナとは分かち合えないものの、それでも自分を愛し支えてくれるミナのことを心から大切に思っていることが何だか切ない。
愛してはいるのに、相手が求めている愛情を返せない哀しさ。
若手職人のユーセフに対してミナが抱いてしまう嫉妬も分かると言えば分かる… が、嫉妬はやはり醜いよねえ…
それでもミナのことを簡単には否定せず、ハリムにとって共に生きることを決めた大切な存在（たとえ恋愛対象として気になる人がいてもそこは揺るがない）として描き切っているところが良かった。
作中に登場するカフタン、美しい色合いや刺繍が本当に素敵で眼福。
衣装や伝統的な手作業を見るのが好きな人は、その点でも必見の作品だと思う。
