エイプリル

M3GAN/ミーガンのエイプリルのネタバレレビュー・内容・結末

M3GAN/ミーガン(2023年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

SFになりきれていない感はありつつも、味わいは確かにSF風ホラー作品でした。
まず序盤のミーガン開発シーンが楽しそうでとても良いです。主人公のジェマが本当におもちゃ好きなんだということもわかるシーンも盛りだくさんで良いです。初っ端からミーガン爆発させるシーンも笑えました。そら怒られるだろ。
ブランドン殺害シーンまではまあまあ割と視聴者にとっても「ケイディを苦しめる悪者を倒すダークヒーロー」感があったんですが、ブランドンの耳を極限まで引っ張って千切った挙句突き落として車に撥ねさせるのは…こう…やりすぎやりすぎ!みたいな感じがあって、そこからかなり怖くなりました。
割とグロテスクな描写が多く、ミーガンの容赦のなさが彼女のルックスの可愛らしさとのギャップになっていてかなり好みでした。

ミーガンとケイディは両方とも「本当の意味で愛されなかった存在」という意味で写鏡になっていて、同時に「ジェマの子育ての失敗」の象徴にもなっています。
終盤ではジェマがケイディに対しては本音で語り反省を述べたのに対してあくまでもミーガンに対しては「モノ扱い」しかしていなかったので、ミーガンの「雑な学習機能だけ与えて後は丸投げしやがって」というセリフが切なかったです。もしもジェマがミーガンに対してもケイディに対して与えた優しい言葉をかけていればラストが変わったかも…とも思えました。

最後にケイディがあんなに好きだったミーガンを裏切るのは意味不明、みたいな話もあるのですが、あれは多分ケイディからすればミーガンはもはや「奪うもの」になってるんですよね。
最序盤のシーンからわかるようにケイディは元々「奪われる」ということに対して非常に嫌悪感を持っており、しかも両親を同時に奪われたことで、その性質に拍車がかかっていると思われます。だからジェマにもカウンセラーにもミーガンを返すようあそこまで激情していたと思うのですが、ラストバトルでは、もはやケイディにとってミーガンは敵でしかないんですよね。
自分で「奪うもの」であるミーガンを倒すことで「奪う/奪われる」関係から脱却できたという意味で、映画としてのストーリーも見事に完成していました

ところがSFとしてはどうしても設定が弱く、特にミーガン周りが気になりました。
まず、ミーガンが馬鹿力すぎるのが意味不明です。何回も「なんでそんなに強いんだよ」って呟きながら映画を見てました。なんでそんなに強いんですか?
ブランドンでも持てるくらい軽いのに、耳を引きちぎったり暴れる犬を押さえ込んだり…この馬鹿力…何!?もはやただのモンスターです。
それからミーガンの攻撃行動は「ユーザーであるケイディを守るため」というのが原則だったと思いますし、だからこそ「守りたいからこそ傷つける」という悲劇性があってよかったのに、最後の最後で彼女はケイディに「恩知らずのクソガキ」とか言いながら殺そうとするんですよね。元々の目的よりも自己保存を選んだ理由も特に語られず、雑にモンスター化させたセリフになっていて残念でした。
最後に上半身だけで這いつくばりながらもケイディのところにやってきたのは「ケイディを殺すため」ではなく「泣いてるケイディの頬を撫でるため」だと思ってました。

そういう粗がめちゃくちゃ目立つ作品ではありますが、個人的には結構怖く感じるシーンも多かったですし、「ケイディの物語」としてみれば納得感のあるオチでもあり良かったです。
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