ごりぞう

ソフト/クワイエットのごりぞうのレビュー・感想・評価

ソフト/クワイエット(2022年製作の映画)
4.5
【誰の心にもある闇】
「バービー」を観る予定が、ホラーが見たいという中二の娘のリクエストに“G指定”のブラムハウスのホラーを観た。
 途中、パートナーから「いつまでこんな胸糞映画を観てるの」という棘のある言葉が出て、茶の間を凍りつかせるホラー。

 オープニングは、主人公である女性が妊娠に失敗し、泣き崩れるシーンから始まる。自己否定の闇が描かれ、その不幸に起因する「許せない現実」という感情のやり場を差別に向ける過程を示す。

 都会ではない、日本でいうと都会に隣接するちょっと閑静な田舎街くらいの場所で、白人至上主義の女性達が集まって、多民族社会に対しても愚痴を言いあい、他愛無い夢を語り、想いを主張する。
 ここまでの展開を観ていると「レイシスト」が問題を起こすホラー映画という単純な評価もできるが、序盤や愚痴合戦の会議は、「誰の心にもある闇」を浮き彫りにしているのだ。
 それを、他者に向けるか、そのまま抱えるか、どこかでポジティブに変換するかによって、人は「他者に危害を加えるモンスター」にもなりえる。
 怒りに燃える表情は、SNSで日常化している誹謗中傷合戦では隠されている。賛同者に煽られて、“ちょっとした気晴らし”で違法で不幸な結末に転落していく様子は、SNSでの炎上騒ぎの過程にも似ていてゾッとする。
 
 
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