えみ

怪物のえみのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.3
社会に居場所がない人を作り出すマジョリティ側の罪を常に意識させられ、辛い。坂本龍一さんの死もあり、でも最初から最後まで彼の音楽と彼の生と死が存在しているのその空間と「生まれ変わり」がある種キーワードともいえる本編と合わさることで、益々胸を締め付ける。
社会的マイノリティにとって、「普通」の人たちの「普通」の言葉が、とても自然に、死を意識せざるを得ない感覚に追いやるのだと思わされるシーンが多かった。
最後はなんかもう感情がぐちゃぐちゃで、でも映像と彼らが美しくてしばらく涙が止まらず立ち上がれなかった。
以下ネタバレ










まだ腑に落としきれていないシーンの解釈は沢山あるが一つだけ。彼らは生まれ変わらなきゃいけないのかと周りに思わされ続けて、心身ともに傷つけられて辛かったんだろうけど、最後は自分たちは間違ってない、生まれ変わる必要なんてないって気づいたんだと思う。彼らがこの世にいるならそう信じて生きて欲しいし、悪気なく怪物たり得た大人たちも全力で彼らの行く道を支えてほしい。もし彼らがこの世にいないんだとしたら、本当に救いようがないけど、そんなふうに命を失う人達が出てこないような社会に、私たちがしていかなきゃいけない。田中裕子の言葉は真実だ。誰でも幸せになれる社会じゃなきゃいけない。一部の属性を理由に幸せになれない社会なんて、そんな場所では他の人間も幸せになれるはずがない。
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