えみ

戦雲 いくさふむのえみのレビュー・感想・評価

戦雲 いくさふむ(2024年製作の映画)
4.4
これを見て、日本はまもなく戦争をすると、かつてないほど現実的な危機感を抱いた。怖くて眠れなくなった。
全ての政治家、『戦争反対』と声に出して言うことに躊躇いがある全ての人々に見てほしい。戦争反対と言えなくなる、戦争が始まる未来がすぐそこまで来ている。
この映画を観た日に書いたSNSの投稿を貼る。
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戦争が怖くて眠れない、涙が止まらないなんて言ったら、大抵の人が私の頭がおかしくなったと思うでしょう。

私もつい15時間前までは、戦争のリスクを所詮抽象的なものとしてしか捉えていませんでした。
今日、というか4月1日、「戦雲」という映画と、三上智恵監督と布施祐仁さんのトークショーを観てきました。今日、私の頭の中では、日本が戦争をするあらゆるリスクの最後のピースがはまったような感覚になりました。もう手遅れかもしれないな、と正直思ってます。一旦吐き出させてください。

「戦雲」は、日米両政府主導の「台湾有事」を口実にした「南西シフト」という防衛政策、すなわち軍事要塞化が進む南西諸島(沖縄本島、与那国島、宮古島、石垣島、奄美大島)を、三上監督が2016年から8年かけて取材したドキュメンタリー映画です。(ポレポレ東中野で、今週は毎日トークショー付き上映されています。ぜひ観に行ってください。)
https://note.com/tofoofilms/n/nb71129acfe90

南西諸島におけるミサイル配備や戦争を想定した実演・避難訓練等の動きも恐ろしいですが、トークショーで布施さんが言及していた、「特定利用空港」と、自衛隊施設の壁を分厚くする政策(予算6兆円)の話が衝撃でした。https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA288GR0Y4A320C2000000/?n_cid=kobetsu

「特定利用空港」はすなわち、日米両政府にとっての「特定重要拠点」です。米軍も含め、「防衛」のために、戦闘機も飛べる空港として位置付けるということです。それが北海道から沖縄まで16ヶ所。全国どこでもいざとなったら軍事要塞化。日本を守るどころかアメリカに戦火が行かないようにするための防波堤に使われるだけです。2022年から、防衛力強化に関する政府の有識者会議は「継戦能力」を高めるために、「5年を念頭に十分な数のミサイルを装備」「これまで十分ではなかった弾薬や施設の拡充を提唱」するなどしてきました。「特定利用空港」と、自衛隊施設の壁を攻撃に備えて分厚くする政策も、この「継戦能力」のためなのでしょう。「継戦」なんて言葉、聞いただけで震えます。戦争が続く限り、人は死に続けるのに、アメリカの防波堤として、日本の国土は全域焦土化するまで戦わされるのでしょう。自衛隊は実質米軍の指揮下にあることは周知の事実ですが、今回の首脳会談で名実ともに指揮権を米軍に統一することのなりうるとのことでした。日本国民が白旗をあげたくても、アメリカが許してくれないでしょうね。太平洋戦争中、なるべく敵国の戦力を削ぐために限界まで痛めつけられた沖縄のように。容易に想像できます。
https://yaeyama-nippo.co.jp/archives/19855
アメリカ・フィリピン・日本合同での中国南海域における合同警備?も始まるそうです。緊張を高めに行ってるのはどちらなんでしょう。それで中国が反応したら、その部分だけを切り取って、中国が攻めてくる!と報道するんでしょうね。アメリカ様からすれば戦争の火種を作るのは簡単です。

私も10月に石垣島を訪れ、自衛隊駐屯地と、石垣市で潰された住民投票についてのフィールドワークを行い、3月4日に「南西諸島と憲法」と題してシンポジウムを開催しました。そこでは、安保三文書の憲法上の問題点や、石垣島における自衛隊配備の実情、そして石垣市の駐屯地配備対象地に関する住民投票を求める署名について、市民の3分の1以上の署名数が集まったにもかかわらず、市議会に否決されたことにより住民投票が実施されなかったことの地方自治の観点からの問題点について紹介しました。

この状況はより深刻になっています。地方自治法改正案が先月閣議決定されましたが、この地方自治法は実質「緊急事態条項」で、憲法改正が必要となりうる改正です。「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」において、国が地方自治体を言いなりにさせられるというもので、地方の団体自治権を削ぐものです。これも戦争の際に国が地方に指揮命令できるような状態を備えるためになされた改正です。

少し南西諸島から離れれば、セキュリティクリアランス法案も、特定秘密保護法をより範囲拡大させ、人権侵害をより重大にしたものとして大変な問題です。秘密の対象が明確でないのに違反したら懲役10年以上もあり得るという内容で、罪刑法定主義の観点からも問題があります。国民の知る権利に係る情報公開制度と、評価対象者の個人情報保護の制度的保障がほぼなされていません。先日の重要経済安保情報保護委員会の参考人質疑の内容を一通り見ましたが、賛成派の参考人は次期戦闘機の輸出を挙げて、同盟国・友好国らとの共同開発におけるセキュリティクリアランス整備の重要性を説いていました。武器輸出の範囲を拡大すれば、防衛関連の情報はどんどんブラックボックス内に押し込められ、国民は戦争のリスクを察知することのできない状態が続くでしょう。セキュリティクリアランス法案も戦争のためなわけです。

南西諸島の話に戻りますが、「南西シフト」の対象となった島々では、防衛省は当初、「防衛上空白のエリアを埋めて住民を守るため」に自衛隊を配備すると説明し、ミサイルの配備などは想定していないかのような説明をしていました。しかし、数年後、当たり前に日米合同演習や、ミサイル攻撃を想定しての避難訓練が行われ、敵基地攻撃能力を有するミサイル配備も進められています。
映画では、現地で抵抗運動をする人々の姿や、ピュアに島民・市民を守りたいと思ってやってきている自衛隊の人々との交流なども映し出されています。個人個人は健気でか弱い存在であると思い知らされます。与那国の自衛隊の隊長が言うわけです。「私たちは絶対に与那国の人たちを守ると言う気持ちでやっています」と。彼はとても誠実な人物であることが地域の祭りのシーンからも描かれるわけですが、彼個人が守ると言っても、法律上はそうなっていないのです。自衛隊の国民保護の任務は、余力があればという位置付けです(防衛白書)。個人個人は別に何も悪くないし、島の仲間として自衛隊員を思うと自衛隊自体悪く言えない人情もあります。結局悪いのはそういう構造を作り出した権力者です。

日本がここまで積極的に戦争準備、攻撃する準備も進めているのに、まだ抑止力のためだと言えるんでしょうか。
着々と戦争準備、アメリカへの領土・国民提供準備が整ってきています。
全てが整ったジャストタイミングで、「台湾有事」が「中国が攻めてきた」というていで始まる未来が目に浮かぶようです。これだけ自国が戦争をする未来を予見できるのに、何も実効性のあることはできないんだな、と自分の非力が憎らしいです。非力な一般人の私が全力を尽くしても止められない可能性の方が高いのに、私にも日常があるから、食べていかなきゃいけないから、戦争を止めるための活動ばかりするわけにもいかない。怖くて悔しくて涙が出ます。戦争になったらどうせ死ぬのに。
でも、「戦雲」の中で、宮古島で抵抗運動を続ける楚南さんが言ったんです。「ここが戦場になるその時まで、抵抗の声を上げなければならない」と。
安保法制のときは、日本の戦後が100年続かないかもしれない危険を想像して、反対の声を上げた。今はそんなレベルじゃなく、数年後、下手したら1、2年後にでも、日本が戦争をするんじゃないかとかつてない恐怖感を抱いているけど、私も最後まで抗いたい、戦争を拒否し続けたい、と思います。

汚い文章になってしまいましたが、近いうちにちゃんと綺麗にして発信し治したいです。意味ある企画も動かしたいです。さすがにちょっと寝ます。
えみ

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