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怪物のZnGaGeのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
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コミュニケーションが取れない、腹の中が分からない、何を考えているのか分からない。そのような他人を「怪物」と表現したディスコミュニケーションを描く作品。

その意味で各登場人物の視点でさまざまな「怪物」が描かれます。

理解できない行動をとる息子
真摯な対応を見せない教員
保身のことばかり考えている同僚
矛盾したことを言う生徒
そして、同性を好きになったかもしれない自分自身

しかし視点を変えることで「怪物」の内面に触れた私たちには「怪物」の不在が明かされます。
それぞれの登場人物が取った行動にそれぞれ意味があり、ただそれが伝わらなかった、伝えなかった、伝えようとしなかっただけなのだと。

ただしそれが分かるのは物語を俯瞰的に眺める観客だけです。

「怪物」は存在すると同時に存在しないのです。



暗い話が苦手なので鑑賞前からどんよりとした気分でした。
じゃあ観るなよ、というもっともな感想が飛び出すでしょうが、そういう直感が働く映画は経験上自分にとって大切な作品になることが多く、是が非でもスクリーンで見ねばと重い心を引きずって劇場へと足を運びました。


出発の汽笛を聴いた彼らは星めぐりの旅に出かけたのでしょうか。
鍵のかかっていたトンネルの先へと駆けていく、バカみたいに美しいラストカットを生涯忘れないと思います。
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