実家から届いたヘブライ語の本にある“歌”により始まる、新生児とその両親を襲う怪異を描くダークファンタジーホラー。
ある宗教圏の夢魔や民間伝承をモチーフに、自然と飽きる瞬間なく観られる構成とテンポ、モチーフを活かした「描写」と「オバケもの・モンスターもののどちらにも属さないデザイン」が絶妙。
キャラクターの魅力や、映画としての凄まじい個性、唯一無二感みたいな強さ等こそないが、コンパクトにまとまり、モチーフを大切にし活かしきった、“ただ名詞引用しましたよ”的でないフォークロアホラーとしては完璧に近い作品。
怖いもの見たいな~なホラー欲で観たら物足りなさはあるかも知れないが、モチーフに関する知識があれば答え合わせ的な面白さとデザイン面への楽しい驚きがあると思う。
主人公らの結末と、エンドロール後に続くアザーサイドのエンディングまで後味を噛みしめられて良かった。
子供狙いの魔物をモチーフにしたフォークロアホラーだと個人的に『ベイビー・キャッチャー』はなかなか良く『ラ・ヨローナ』はイマイチだったのだが、本作はかなり好き。
中弛みなし・起承転結メリハリ・オチ・モチーフの活かし方・造形 が全部揃ったフォークロア系は、私にとって伝説の転生、童話の実写化や新解釈のようなものなので、それだけでシンプルに良さを感じる。