書き忘れというか、ネタバレ厳禁ムードで後回しにしてたけどうっかり時間ができてしまったので長文感想書く。
子供の頃、ジブリの絵柄が全然受け付けなくて(絵柄っていうか顔か)、ある程度大人になってから観るようになり、「千と千尋の神隠し」で初めてその素晴らしさに気づいたタイプで、老境に入った宮崎駿の作品ということを踏まえつつ、結構好きな作品だった。
まず想像以上に「普通のジブリ作品」で、もっと実験的なタッチやストーリーがくると思って身構えてた分、いい意味で「絵や動きに密度のあるちゃんとした新作だ〜」という気分が鑑賞中にあった。
セルフパロディ的なキャラクターや見せ場、重心の移動にこだわったアニメ表現、極端にしずる感(あまり好きな表現じゃないけどそうとしか言いようのない)マシマシの食事や流血のシーン、わらわらのぷにぷに感など、演歌歌手の歌い回しが年々くどくなるのに似たねっとり感が気持ちよさを通り越してもはやグロテスクで、そこにも作家性を感じた。
宮崎駿は年々ストーリー上の見せ場とか伏線とかカタルシスというものを放棄しているように思え、自分がそのとき表現したいことや、なんなら「思い出したこと」を作品に入れてるような感覚で、前後のつながりの悪さを含めて、まるで夢をみてるような感覚で、そこがとてもいい。好き。
説明がない、ストーリーがわからない、理屈がわからない、なんでこんな結果になるの?って、それはまさに人生そのもので、世の中の仕組みなんて全部は理解しきれないまま死んでいくわけだから、その中で82歳が考えた「本当に大事なものってなに?」の答えが終盤のやりとりに込められてると思ったら、そこだけはやっぱりちょっと泣ける。だって青鷺(詐欺師!)はどうみても鈴木プロデューサーだったから。殺したいほどの敵に思えたり、時にはやっぱこの人がいないと、と思えたり、そういう人を大事にしなさいってことかなと思った。
大量のセルフオマージュを不思議の国アリスで包んだようなジブリらしい宮崎駿らしい良作でした。アニメーションとしての細かい見どころが多くて目が忙しく、ストーリーの退屈さ、みたいなところは全然感じなかった。
ただこれが「眞人と不思議の鳥の王國」みたいなタイトルで日テレあたりで毎日見せ場と共に喧伝されたら観たかと言われると怪しい。まんまとやられてたなって気持ちもあります。