Ryoma

丘の上の本屋さんのRyomaのレビュー・感想・評価

丘の上の本屋さん(2021年製作の映画)
4.3
美しい自然で満たされた丘陵下一面を見渡せる丘の上に佇む古書店のロケーションが良すぎた。店主リベロの名前にちなんで名付けられた店名が記された煉瓦造りの外観を構えた店内に一歩足を踏み入れると、理路整然と並べられた味わい深い古書の数々が目に飛び込んできて、その趣深いどこか懐かしさをも感じる雰囲気に癒された。バイオリン・ピアノの優しい音色をバックに流れるそこでの長閑な時間は何ものにも変え難い素敵な時間だったし、自分の理想が投影されたあのような場所や雰囲気は本当に憧れる。
神父や大学教授など、そこを訪れる様々な人々も個性的かつチャーミングで、年代物の小説や宗教物の発禁本・アート系写真集などの色んな要望に応え親身になってお薦めを提案するリベロの優しく円熟した人柄が滲みていて、彼の人柄に強く惹かれた。
高齢男性である店主と幼い移民の少年との交流は、暗喩的に年齢も人種も国境も超えて紡がれる絆が描かれており、心が通じ合うのに改めて年齢や境遇などが関係ないんだと気付かされた。
店主が少年にお薦めした多種多様な本に対してお互いに感想を言い合う中で、その対話を通して絆が深まる様、本を介して理解を深めあっていく様がみてて心地よかったし、店主が各々の本ごとに少年に対し道徳心を教えようと教示を授ける様子は本当の祖父と孫のようでひたすらほっこりした。
本からは本当に色々なことを学べるんだということを改めてリベロに教えてもらった。自分の人生を第一にした上で、周りの人のことも気遣い大切にして生きていきたいと、リベロの本を介した語りから強く感じた。
最近みた作品の中でも、随一に嫌な人が出てこない優しい作品だった。最後のシーンも少年に向けたリベロの愛情が詰まっていて本当に好き。
Ryoma

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