りょう

赦しのりょうのレビュー・感想・評価

赦し(2022年製作の映画)
3.8
 刑事事件の裁判劇は、被告人の無罪を争う物語が多いと思いますが、すでに懲役刑に服している加害者の量刑の不当性を争うことを目的とした再審という珍しい設定でした。ネタバレは避けますが、未成年者であった加害者と被害者の関係や大人たちのダメ人間っぷりなど、物語の設定はとても興味深かったです。
 インド出身のアンシュル・チョウハン監督の映像は、とりわけ情景がきれいだし、極端に人物にクローズアップする奇抜な表現も含めて、なかなかよかったです。
 ただ、演出の特徴なのかどうかわかりませんが、セリフに余白がなく、どうにも不自然な間合いの会話で、あえてリアリティを無視しているようでした。主人公である被害者の父親が“日本語の堪能な外国人”のようなキャラクターだったことにも違和感がありました。彼を演じた尚玄さんが外国由来の俳優さんかと思いましたが、そうではないようです。あの“外国人訛り”を演技でやっていたならすごいです。
 加害者の夏奈を演じた松浦りょうさんは、この役柄がぴったりな印象でした。ほぼ“顔立ち”だけで彼女のキャラクターを表現できています。最初の裁判で情状酌量を主張しなかった理由がはっきりしていれば、もっと説得力のある演技になったと思います。国選弁護人が彼女の供述を信用してくれなかったとか、彼女が完全に自暴自棄になっていたとか…。
 98分の短尺で、タイパを意識した演出と編集だったのかもしれませんが、こういう物語の設定なら、もっとゆったりと余韻のある展開がマッチするはずです。いろいろな要素がよかったので、すごくもったいない作品でした。アンシュル・チョウハン監督の次回作には注目しておきます。
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