飛んでく

パスト ライブス/再会の飛んでくのネタバレレビュー・内容・結末

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

28.

共感したくないのに共感してしまう
忘れたいのに忘れられない気がする
そういう映画だった

---断片的な感想---

"泣いても誰も私の存在を気にかけてはくれない""私はここで成し遂げたいことがあるのにソウル行きの便を探してる""いつソウルへ来るの?""私がなぜ(ソウルへ行くの)?"という台詞はすごく現実的だった。ナヨンではなくノラとして生きるには強くないといけなかった。

ヘソンがあの頃の少女に惹かれ続けるのは、一種の現実逃避にも見えた。綺麗な思い出を綺麗なままにして生きていけるのは、あの時こうだったらこうなっていたかなと考えられるのは、ヘソンの特権性なのかもしれないとも思った。

アーサーが「僕に勝ち目がない」「あの時他の人と出会っていたらその人と結婚していたのではないか」と話すシーンが辛かった。ノラは"あなただから好きになった/結婚した"とは言わなかった。グリーンカードという現実的なアイテム、「君の寝言は韓国語なんだよ」という台詞。心の芯に辿り着けない場所があるのは皆同じだけど、文化や言語でそれが強調されていく感じ。優しさだけで彼女を包もうとするけどどうしようもなく寂しい気持ち。

そして交わす言葉よりもヘソンとナヨンが交わす目線が何よりも全てを物語っていてたまらない気持ちになってしまった。ヘソンがナヨンを見つめる時の表情よ。

来世のことは分からないけど、その時にまた会おう。と言うのはロマンチックな別れ方だと思った。そんな台詞を言ったヘソンも、バイバイするまで涙を我慢するノラも、彼女を優しく迎え入れるアーサーも素敵だった。

3人それぞれに共感して、寂しくなった。もう少し若い頃にこの作品を観ていたらここまで共感できなかっただろうなと思う。
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