てつこてつ

マリウポリの20日間/実録 マリウポリの20日間のてつこてつのレビュー・感想・評価

5.0
予告編を見た時から、この作品は絶対に劇場で鑑賞しようと決めていた。

覚悟はしていたものの、ロシア(=プーチン)によるウクライナ侵攻で最初に攻撃を受けたマリウポイ市内で撮影された貴重かつ生々しい映像の数々には衝撃を受け、あっという間の95分であった。

最初の攻撃、病院、そして一般市民の住宅街への情け容赦ない軍事飛行機と戦車による爆破の数々・・幼い子供らを失った父親や母親の悲痛の叫びには涙せずにはいられなかった。

同時に、スーパーの窓を割って略奪を試みる市民もいたというあまり報道されてはいない事実も記録しており、取材記者のナレーションで紹介される医師の言葉・・「戦争はレントゲン写真のように人間の本心を写し出す」「善良な人間はより良き人間になろうとし、悪意ある人間はよりその邪悪さが増す」が深く刺さる。

取材記者の母国でもあり、自身の家族の身を案じながらも、侵攻後も海外メディアとしては、唯一市内に留まり撮影を記録し、情報を発信し続けたAP通信の気骨溢れるジャーナリズム精神にはただただ頭が下がる思い。

同時に、本作が世に出てオスカー長編ドキュメンタリー受賞を果たしても、いまだ歯止めが効かないプーチン政権の侵略行為にはジャーナリズムが持つ力の限界も感じぜざるを得ない。

タイトルにもある通り、AP通信の取材班は攻撃開始から20日目に脱出しており、その後、マリウポリは陥落し、今はロシア政権下にある事実は周知の通り。

作品内に登場した医師団、軍人、警官、病院に避難してきた一般市民の方々の無事をただただ祈るばかり。
てつこてつ

てつこてつ