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マリウポリの20日間/実録 マリウポリの20日間のmaroのレビュー・感想・評価

4.0
2024年日本公開映画で面白かった順位:12/55
  ストーリー:★★★★★★★★★★
 キャラクター:★★★★★
     映像:★★★★★
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★★★

ロシアによるウクライナ東部のマリウポリへの侵攻を追ったドキュメンタリー映画。
内容的にこれを面白いというつもりは毛頭ないけれど、マリウポリの現状がいかに悲惨か、胸がえぐられる思いだった。
これは全世界の人に観てほしい。

ここで僕は政治的な発言をしたいわけではないし、この作品自体も別にロシアの批判やウクライナの擁護といった主義・主張・意見があるわけでもない。
ただ、事実としてマリウポリで起こった事実が淡々と記録されているのみだ。
なので、あくまでもこのドキュメンタリー映画を観た上での感想になるけれど、とにかく戦争のしわ寄せは罪もない民間人に及ぶということが痛いほどわかる映像の数々だ。
車から火の手が上がり、建物も鉄筋が見えるほど破壊され、街のあちこちから煙が上がっている。
それこそ、まるで映画やゲームで観るような光景が現実のものとして目の前に広がっているのだ。

それだけでもかなりショッキングではあるんだけど、一番心が痛んだのは犠牲となる民間人。
彼らには何の罪もなく、戦闘行為に参加しているわけでも当然ない。
日々、平和に暮らしていただけなのに、突如として行われたロシア側の爆撃によって負傷、最悪の場合、命が奪われていく。
映像の中で正確に月齢が明示されていた最年少の犠牲者は18か月の赤ちゃんだった。
もちろん、それよりも幼い子の遺体もあった。
ある16歳の少年は友達とサッカーをしているときに爆撃され、両足を失っていた。
小児科・産科病院も爆撃され、ある妊婦は骨盤を粉砕骨折し、母子ともに亡くなった。
逆に、そんな状況にありながらも新たに生まれた命もあったけど。
ロシアは民間人には手を出さないと言っておきながらも、こうやって民家や学校、病院などを攻撃しているのだ。

人々が避難生活を送る中、電気やガス、水道が止まり、ネットも繋がらない状況。
街では略奪が起き、ウクライナ兵士も「普段使っていた店でなんでそんなことをするんだ!」と呆れる様子。
映像を観て驚くんだけど、みんなさも当たり前かのように店に入って、しれっと物を盗っていくんだよ。
「戦争はX線。人間の内部を映し出す」って言ってる人がいたけど、まさにその通りだと痛感した。

最終的に、ロシアが侵攻を開始した2022年2月24日から86日後にマリウポリは陥落した。
その間に約2万5,000人以上が命を落としたと報告されているけれど、実際の犠牲者数はこれを大きく上回るだろうとのこと。

そんなわけで、ロシアがウクライナに対して何をしているかというのがよくわかるドキュメンタリーである。
子を持つ身としては、やはり幼い子供の命が失われることが何よりも辛かった。
この映像を記録に残したAP通信のミスティスラフ・チェルノフにも2人の娘がいて、早く子供たちに会いたいと言っていた。
にも関わらず、命懸けでこの事実を世界に発信したのだから、その勇気ある行動に賛辞を贈りたい。
記録には残っていないけれど、きっと第二次世界大戦中の日本もこういう状況だったんだろう(もっとひどかったかもわからないけど)。
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