小屋

ゴッドランド/GODLANDの小屋のレビュー・感想・評価

ゴッドランド/GODLAND(2022年製作の映画)
4.0
 前半アイスランド横断の部分が長かったあ…。めちゃくちゃ綺麗な風景なんだけど、会話が少なくドラマもあんまり動かないどね眠くなった。でも後半はドラマがだいぶ動き、楽しめて見れた。なんだかざわざわとしたものを感じる映画だったと思う。『パワーオブザドッグ』とかもそうだけど、こういう作品好きだ。

※以下ネタバレ

 とにかく風景がすごかった。そして特徴的なウェスアンダーソンのよなにシメントリー、横から撮るショット。この作家の特徴かどうかは過去作を見てないためわからないが、牧師の主人公の保守的な考え方を表しているような気がする。そんな構図がバキバキに決まった画面に映されるのは、アイスランドの自然の厳しさと激しさと美しさで、スタンダードサイズの画面を飛び越すようなエネルギーを感じる風景だった。
 映画の最初の方で語られる、ウサギの後尾を見た男の話は、あえて孤立を選んだアイスランドのことを言ってるようにも聞こえる。そう考えると、その均衡を崩そうとした主人公に、自然(≒神?)は試練を与えるがそれを克服できず内に悪を宿すことになるという話になるのかな。自然は美しくもあるけど、時には非常に残忍だから。そして孤立の均衡を崩そうとすることは、「境界線を(勝手に)踏み越えること」や「支配者が一方的に押し付けること」と言い換えることが可能かもしれない。そう考えると、狂気を宿し逃げた主人公が、「俺は教養なんていらないんだ」と領主?に刺される結末も納得がいく。
 そしてこの物語は「ディスコミュニケーション」もテーマであると感じた。牧師と島のガイドは自分の言語を話し、互いを理解し合おうとしない。直接言葉を介さないコミュニケーションは、憶測を生み、疑念を生み、無理解を生み出す。だからこそ、(牧師をある程度信頼して?)デンマーク語を話して、罪を告白したガイドを殺してしまうなんてことができるのだ。このテーマは非常に現代的であると感じた。だがこのテーマは『イニシェリン等の精霊』の方が上手く表現できてると感じた。
 だがこの作品のラストが好きだ。自然はそんな人間同士のいざこざなど関係なく、等しく人間に接してくれる。主人公はずるく罪深い人間だったが、それは死後美しい花々が覆ってくれることとはなんの関係もないことなのだ。厳しいまでに残酷だが、美しい。
 しかし写真を撮るという行為は、このラストと矛盾しているようにも思える。どういう意味があるのか考えているが、それは自然(の流れ、時間)に唯一対抗する手段が、写真、という時を固定する方法だからだろうか。そこには確固として生きた人の息づかいが、のこってるからかもしれない。けどちょっとこの考えは浅い気がするので読みとしては正直自信ない。
 まあでも最初に言ったけれど、こういう時間の流れを感じる系の睡眠を誘発する系の作品、別に嫌いじゃないから楽しめた。犬とかウマとかが可愛かったのもよかったです。
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