りょう

コヴェナント/約束の救出のりょうのレビュー・感想・評価

コヴェナント/約束の救出(2023年製作の映画)
4.4
 2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件をきっかけとするアフガニスタン侵攻は、2021年8月のアメリカ軍の撤退により終了しました。ただ、それはタリバンの勝利を意味するものだったし、どんなふうに侵攻を終結させるかによっては、当事国にさらなる惨状をもたらしかねないことを痛感させられました。
 アメリカ軍は、現地の協力者であったアフガニスタン人の救出に失敗することになります。その顛末をわかっているので、前日談を描いたこの作品も悲痛な想いで観ることになりました。
 最初は、ガイ・リッチー監督がそんな物語を映画化するなんて、“大丈夫か?”と思いました。いきなり作風を変えて失敗するんじゃないかと…。
 ほとんど彼の作品とは思えないほど、とても硬派な戦争映画でした。ジェイク・ギレンホールが主演だったからか、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の作品のような雰囲気です。大規模な戦闘シーンはありませんが、多勢に無勢の状況で緊張感が漂っています。終盤のクライマックスで2人が絶体絶命のピンチに陥りますが、そこに訪れるカタルシスが凄まじかったです。“彼ら”の圧倒的な戦力がいろんな意味で恐ろしいです。
 とても印象的だったのが、最近のガイ・リッチーの作品で劇伴を担当しているChristopher Bensteadのチェロの音色です。戦争映画の派手な劇伴でなく、全編にわたって抑制された演奏が効果的でした。
 邦題のサブタイトルとポスタービジュアルが安っぽくて残念ですが、それでスルーしてしまうのはあまりにもったいない秀作です。
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