ももいろりんご

コヴェナント/約束の救出のももいろりんごのレビュー・感想・評価

コヴェナント/約束の救出(2023年製作の映画)
4.0
戦場で男二人、残された選択と決意。
実際にあった出来事をもとに作られたという。
アーメッドは何故そこまでしてジョンを助けたのか。
.
2018年。アフガニスタンでタリバンの武器やその製造工場を探索、破壊する任務を持ったチームのジョン・キンリー曹長。日々、危険な見回りや作戦が続く中、とある情報からもたらされた秘密工場に潜入、チームは全滅しかけてしまう。怪我を負ったジョンを助け、現場から100キロ離れた米軍基地までジョンを運んだのは、チームの現地通訳・アーメッドだった。
.
この戦いは2021年アメリカがアフガニスタンから撤退することで終結をしているのだが、もっと早く停戦してくれたら、こんなことは起きなかったし、多くの人が死なずに済んだ。
しかし、タリバンが再度政権を握った今、20年前へ逆戻り。この無力感はなんだろう。
.
横道にそれたな。
.
通訳の存在については考えたことがなかったです。
現地の戦いでは、地元住人と話すにもタリバンと交渉するにも、現地の言語がわかるものが必要だ。そのために雇われる現地通訳は実に数千人。タリバンからは裏切り者とされ家族もろとも制裁の対象になる。彼らにはアメリカへ渡るビザが発給される。
.
アーメッドの決死の努力により、生きてアメリカに帰り家族と再会できたジョン。意識が戻り身体が回復すると、アーメッドと家族の渡米が叶わないばかりか、タリバンに狙われ行方不明だと知って愕然とする。
.
国から称賛されるべきはアーメッドなのに、彼は今も命の危険に晒されている。なぜ俺を助けた?“呪いのようだ”って言葉も理解できる。自分だけが安全な場所で生きていることに、後ろめたさを感じて、夜も眠れず一時も休まることのないジョン。
.
ジョンを演じるジェイク・ギレンホール、アーメッド役のダール・サリム、どちらも素晴らしかったなぁ。戦場での緊迫感も息を止めるほど。こんな形でアメリカに物申したのかと、ガイ・リッチーを見直した。
.
他のレビューワーさんもコメントされたけど、なぜ?アーメッドはそこまでしたのか。
.
私はあの作戦シーンだと思った。予想以上に敵の規模が大きく場所が遠かったために援軍が遅れた。ジョン以外の仲間が次々と失われていったあの絶望的なシーン。
戦闘員ではないアーメッドは、なんとしててもジョンを生きて返す。彼の闘いの決意だったと。
.
それが”呪い”となってジョンを奮い立たせる。
.
単純な友情とか絆とか、きれいな言葉ではないのかもしれない。もう男の意地とか、俺も生きるからお前も生きろみたいな生への執着だったのかもしれない。
.
今も世界で起こっている戦争。戦争を描いた作品は好きで観るけれど、同時に美談なんてクソくらえじゃんと叫びたい。現実にある怒りと悲しみと希望のお話。