saeko

夜明けのすべてのsaekoのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
2.6
小説を実写化することの難しさに思いを馳せながら観た。

小説では文字で人物の背景や心情を説明できるが、それを映像で忠実に再現しようとすると説明的になりすぎてしまうのだろう。

物語の本質を抽出して、映像というパッケージに合うように、台詞を変えたり、設定を変えたり、原作にはない場面を新しく追加したりする。

ここが脚本家や監督の専門性の発揮しどころなのだと思うが、この作品では物語の筋を軽く撫でるだけで、大事な部分を取り零してしまっているように感じた。

小説で描かれていた、大げさではないけれど、それでも他人とわかり合えない辛さを抱えた人たちが出会い、直接的でも間接的でも、さりげない関わり合いの中で、少しずつ心が和らいでいく、少しだけ日常が変わって見えるようになる、という繊細さがいまいち伝わりきらず、なんだか突然お互い干渉し合って元気になりましたみたいな流れに見えてしまった。

「夜明け」というタイトルに合わせて会社の仕事内容を変えてしまったのも、やや安直だったかも…。

それ以外にもわざわざ改変しているのに特に効いているわけではない要素が多くて、なんとも納得いかない部分が多かったけれど、光石研さんの味わいのある芝居はとても素敵でした。
saeko

saeko