烏丸メヰ

オクス駅お化けの烏丸メヰのレビュー・感想・評価

オクス駅お化け(2022年製作の映画)
4.2
韓国都市伝説×Jホラーの血脈。
バズり至上主義のマスコミに勤める記者がほんの話題稼ぎに手を出した鉄道での死亡事件。
やがてそれは不可解な現象を呼び、恐怖の中で、記者達はその駅の過去を手繰り寄せていく。


荒削り感はあるが、この感じに★4以上の満足感を得てしまうのは「最近のJホラーの役者PV化&恐怖を真剣に作らずそれすらもスカした逃げ&過去の名作やネット怪談の軽々しい消費」的な風潮のせいで、Jホラーを観たのに(かつての楽しめた)Jホラーらしさで満たしてもらえなかった、という残念さの蓄積のせいだと自分でも思う。
特に「貞子」をラブコメの材料にする作り手や、その“作品の怖くなさ”をも「知名度を獲得していくのは貞子の目的だから道化的な知名度の上がり方も貞子の野望が叶ってるでしょ」みたく肯定できてしまうJホラーファンとは私は合わない。
「Jホラーの作り手が絡んでるものを観に行き、Jホラーらしい特徴を浴びられた」という(ただ予想・期待通りのものを見られたという)この満足感すらも、昨今の映像体験では得るのが希有である。

この作品は、ジャンプスケア、忍び寄る不穏さ、思わず逃げ出したくなる程に突きつけられる痛ましさまで網羅した名作Jホラーに散見される「らしさ」のエッセンスを、韓国の得意とするノワールや社会性ある映画の風合いで舵を切る。
我々日本人の多くが知っている、“知りすぎている”と言えるほどの高橋洋監督の文脈が、現代メディアや韓国ノワールの空気に合わせてブラッシュアップされた黒い恐怖と言って過言ではない。
故にJホラーファンには「新鮮さがない」と映るか「これが好きだった」と映るかに二分されそうではある。
私は後者だった。


切り取られた空、その色、最後に見た景色。
埋もれていた悲しみ、消えない業がもたらす消せない連鎖。


(映画作品そのものの加点ポイントではないので★には反映させていないけれど、パンフレットにある製作経緯の記事はJホラー好きならなかなか楽しめると思う)
烏丸メヰ

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