金宮さん

法廷遊戯の金宮さんのレビュー・感想・評価

法廷遊戯(2023年製作の映画)
4.0
二転三転ミステリーを楽しんでいたら、司法制度について深く考えることになる傑作。いくつかのダサダサ演出さえなければとんでもなかったのに。

講義シーンを活用し冤罪と無罪の違いを「冤罪は神のみぞ知る。仮に死刑宣告を受けていても、実際に罪を犯していなかったり刑罰が重すぎるなら全てが冤罪」「無罪は検察が立証に失敗した結果にすぎない」と説いてみたり。「同害報復=目には目を」でハムラビ法典まで持ち出してみたり。司法を考察させることに対してかなり志が高い。

でも何故か消えないモヤモヤ感。
説明過多は法廷ミステリーなのでしょうがない。作中の計画自体がそうであるように、演出がとにかく周りくどくて、大森南朋さんよろしく「ズバッと言えや!」と思わなくもないが、代替案も見つからずそこは飲み込める。

なにがそうさせるか?
「裁判中に"無辜ゲーム"っていうワードは使わんやろ」「強迫観念演出のストンプクラップはあれ、なんですか?」「杉咲花さんの狂い方描写は30年前から金田一とかコナンでやってたやつ」などから感じる、そこはかとない「バナー漫画感」でしょう。極めつけは作品テーマにまったく沿っていない主題歌エンドロールが商業主義フルスロットルで激萎え。これらがとにかく作品の品格を下げていて本当にもったいない。主題歌問題については、現在のショービズでは8割くらい減るんじゃないかと思って安心できるけど。

傑作すぎて粗が目立つが、楽しめるし勉強になる素晴らしい作品なのは間違いない。

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・悲劇的ファムファタール枠は杉咲花さん一択になってるのかもしれない。前述の古臭サイコは演技指導のせいなので杉咲さん自身はまったく悪くない。そろそろ漫画『電波の城』を杉咲さん主演で映像化してほしい。テレビ資本とジャニーズの勢力が弱まった今ならいけるはず。今作ではリンドウの花まで出てきちゃって、どうしても想起しちゃいました。リンドウの花言葉は「あなたの悲しみに寄り添う」。

・しっかり者の北村匠海くんも素晴らしいので久しぶりに見れて嬉しかった。序盤で退場しちゃう戸塚純貴さんも登場時間に比較して存在感を発揮していた。
金宮さん

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