このレビューはネタバレを含みます
今回も吉田恵輔 監督の演出に魅入られてしまいました。
良い作品でした。
① missing[見失う]な人々。
沙織里(石原さとみ)・・・"人間性(思いやり・
気遣い・愛情)"を見失う。
豊(青木崇高)・・・妻や義弟への"共感"を見失
う。
圭吾(森 優作)・・・"自尊心"を見失う。
三谷(小野花梨)・・・仕事に対する"自信"を見
失う。
砂田(中村倫也)・・・公益性より話題性を優先する報道に、記者としての"在り方"を見失う。
"ゴトーを待ちながら"のような不条理(不毛)劇だと理解はしていますが、美羽ちゃん(ゴトー=神様)がいなくなった事で、信仰(心の安寧)を失った人達が三者三様に印象的でした。
②神様が去った地には、なにも実らず。
人の命さえも報道の消費コンテンツになる事が、当たり前の日常で、snsでの目的意識のない誹謗中傷が、不毛さを加速しているように感じた。
自身もまた不毛化に加担している一人ではあるだろうけど、分かりやすい答えがあるわけではなくて、劇中のキャラクターと同様に悩み・悶える事しかできない、それこそが大切なのではないかとさえ思った。
③2つの引力。
吉田恵輔 監督の演出に魅入られてしまう理由を、考えてみると感情コントラストの描き方が、好きなのだけど...
淡々とした日常の中でネガティブな感情(怒り・悲しみ・不安・失望・罪悪感)が強調する演出に、取り分けエグ味(刺激)を感じるのだと思う。
俳優陣の演技は、皆さん素晴らしいけど、特に石原さとみさんが一番印象に残った。
いつ暴発するかもしれない感情を、抱えながら正気と狂気の狭間で、ぬたうつ姿が痛々しくも劇中のキャラクターの中で一番、躍動(生気があふれる)している様にも感じて観ていた。