歌うしらみがおりました

ミッシングの歌うしらみがおりましたのレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
2.0
気合の入りまくった渾身の傑作。だけど私はきらい。

チャップリンの有名な「人生はナンタラ」を思い出すような、撮り方がされていると思った。
行方不明となった娘をいかなる手段を使ってでも探し出そうと奮闘する両親と周辺の人々という軸に対してどの程度の距離感で捉えれば、どのような印象が齎されるかを考え抜いて撮られている。基本的にこの物語は悲劇なのだが、SNSの目撃情報を頼りに遠出するも、その目撃者と会えないばかりかアカウントが消されていたことを知った石原さとみと特に詳細は知らずのほほんと心配してくるババァとその間で右往左往する青木崇高や、ヒステリーを起こして拒絶したTVクルーの車に全力疾走して「やっぱり撮って」と窓をバンバン叩く石原さとみや、ロングインタビューで「なんでもないようなことが幸せだったと思う」と言った石原さとみに対して思わず「虎舞竜」と呟いてしまうカメラマン、そして商店街を歩く石原さとみの後ろで喧嘩してる男女あたりのシーンは、細心の注意を払いながら悲劇と喜劇との間を行き来させていたように感じた。或いは、上述のババァや喧嘩してる男女といった視点を盛り込むことで、世界を相対化させることに成功している。

でも、その悲劇成分が幾分役者、特に石原さとみのメソッド演技と言えるような迫真の演技に頼りすぎていて、演者との距離の近さに胃もたれしてしまった。アプローチとしては『こわれゆく女』に近いのかもしれないが、本作はキャラクターの怖さよりも石原さとみの頑張りを褒めたくなってしまう脆さがあると思う。

最後の方はBase Ball Bearの名曲『生活PRISM feat.valknee』が(私の脳内で)流れていたが、青木崇高がいる部屋の窓ガラスバリンで終わった方がソリッドだった気もする。

まあ、きらいと言っても泣いちゃったりはしてますけども。特にいっちゃん最後、ビラとか配ったりした別の疾走事件の娘の母親に「何かできることがあれば手伝いたい」と言われて慟哭する青木崇高には号泣しましたよ。

個人的に一番好きだったのは森優作の頭ポリポリ。