りっく

首のりっくのレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
2.8
人生なんて所詮遊びで、だからこそ遊んだもん勝ち。人生なんてしょーもないから、人生期待しただけ無駄。そんな虚無感の中で打ち上がる花火のような虚しさが北野映画にはあるが、超豪華戦国絵巻のような見てくれの本作においても、それは変わらない。

北野映画ならではの即物的なバイオレンス、男同士のホモソーシャル感、そして人間がまるで人形のように死んでいく。ひとりひとりの登場人物の内面を掘り下げたりしないからこそ、観客はその光景を観ても特に心は動かされない。逆にコントのようなバカバカしささえ漂う。

この身も蓋もないバカバカしさが本作の肝で、大将の首を取る、首を賭けるといった首に至上の価値を置き、それに固執しまくるにもかかわらず、その首が誰なのかも判別できない滑稽さはその極みだろう。自分の名誉や組織内でのポジションしか見ていない人間たちの愚かさが浮き上がる。

ただいかんせん映画としての面白さは感じられない。各キャラクターの利害関係や思惑などは交通整理されているものの、北野映画らしからぬダラっとした画が続き、全体のトーンや演技のバランスもかなりギクシャクしている。ラストのオチにも意外性はなく、終始想像の範疇に収まってしまうのが物足りない。
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